韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は5月18日、化学工学科(Department of Chemical Engineering)のパク・テイホ(Park Taiho)教授らが率いる研究チームが、ペロブスカイト量子ドット太陽電池の重要な構成要素である正孔輸送材料の新たな設計を開発し、電池の効率を大幅に向上させることに成功したと発表した。この研究成果は、ACS Energy Lettersに掲載された。
ペロブスカイト量子ドット太陽電池の効率は、電荷輸送を担う正孔輸送材料の性能に大きく左右される。しかし、従来の正孔輸送材料では、ドーパントが原因で劣化が急速に進むことがあるため、ドーパントを必要としない正孔輸送材料を研究する必要があった。
パク教授らの研究チームは、硫黄化合物とセレン化合物をベースにしたポリマーを含む正孔輸送材料を設計した。これらのポリマーは電荷移動度の向上につながる構造的特徴を有しているほか、セルの電気的特性を補完する働きも持つ。
(出典:POSTECH)
対照群による試験の結果、この新たなポリマーを用いた太陽電池は、電力変換効率(PCE)15.2%を達成し、40日後も当初PCEの80%を維持することが示された。この研究の結果は、新たに設計した正孔輸送材料がドーパントを使用しなくても効果的に電荷移動度を高めることができ、高いPCEと安定性を実現することを実証している。
パク教授は、「今回の研究結果は、従来の電荷輸送材料からのパラダイムシフトであり、今後の太陽電池デバイスの研究における利用が期待される」と述べている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部