韓国の漢陽大学校(Hanyang University)の研究チームが、体内のがん細胞を発見し、その周囲の水分子のみを加熱する新たな治療法を開発した。研究成果は、Nature Communicationsに掲載された。
同大学化学科(Department of Chemistry)のイ・ジュンスク(Lee Joon-seok)教授と生物工学科(Department of Bioengineering)のイ・ドンユン(Lee Dong-yun)教授らのグループは、近赤外線の波長域である1.0マイクロメートルの波長域で水分子を加熱するために、ネオジム-テルビウム(Nd-Yb)からなるランタノイドベースの材料を開発した。この材料は、水分子が1.0マイクロメートルの波長域で強く吸収されることに基づいて光熱効果を発生させ、水の一部だけを加熱することを可能にする。さらに、開発したナノ材料にツリウム(Tm)をドープすることで、発光寿命の長い近赤外イメージングも実現した。
イ・ジュンスク教授は、「既存の1.0マイクロメートルの波長は水分子を加熱するため、人体への適用には限界があった。我々は視点を変え、がん細胞周辺の水分子を選択的に加熱する新しい光熱効果方法を適用した。今回の研究をベースに、より効率的な光熱効果を発揮する多機能ナノ粒子の開発に注力していく」と述べた。また、イ・ドンユン教授は、「この研究成果を商品化することで、外科的アプローチが困難な難治性・再発癌患者の治療に活用することが可能になる」と語った。
研究チームが開発した技術は今後、悪性脳腫瘍の診断・治療での利用が期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部