韓国の高麗大学校(Korea University)は9月15日、生物工学科(Department of Bioengineering)のチョン・アラム(Chung Aram)教授率いる研究チームが、有効性の高いがん免疫療法につながる新たなT細胞改変システムを開発したと発表した。この研究成果は、学術誌Nano Lettersのオンライン版に掲載された。
典型的ながん免疫療法では、患者のT細胞を分離してキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を導入することにより、がん細胞を正確に特定して標的にするCAR-T細胞を作製する。遺伝子を細胞に送達するには一般に、ウイルスやエレクトロポレーション法が使われるが、従来のアプローチには、コスト、遺伝子送達効率、送達後の細胞の安定性をはじめとする欠点がある。
これらの欠点に対処するため、チョン教授の研究チームは、T細胞を用いた免疫療法を製造するためのハイドロポレーター・プラットフォーム(hydroporator platform)を開発した。このシステムは、マイクロ流体チャネル内の特定の流体の流れを利用して、細胞膜と核膜の両方を開き、細胞内への遺伝子導入を可能にする。
この技術は、さまざまな種類の物質に関して優れた送達効率を誇り、1分間に100万ユニット以上を処理することができる。さらに、従来のエレクトロポレーション法よりも送達後のT細胞の安定性が高い。
チョン教授は現在、2021年に研究室から生まれたスタートアップMxT BioTech社を通じて、ハイドロポレーターの実用化に積極的に取り組んでいる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部