韓国の光州科学技術院(GIST)は韓国科学技術院(KAIST)と共同で、世界最高水準の有機混合伝導体材料を開発し、超高性能電気化学トランジスタの実装に成功した。この研究成果は、Advanced Materialsに掲載された。
有機混合伝導体をベースとした電気化学デバイスである有機電気化学トランジスタは、イオン注入を通じて信号の増幅やスイッチングが可能なため、体内に埋め込んで脳や心臓、筋肉などのさまざまな生体電気信号をチェックしたり、人間の脳を模倣した神経形態学的デバイスとして活用したりすることができ、次世代のバイオインターフェースシステムとして注目されている。その一方で、有機材料を使ったトランジスタデバイスの増幅特性とスイッチング特性の低さが、実用化の妨げとなっていた。
この問題を解決するため、GISTの材料科学・工学科(School of Materials Science and Engineering)のユン・ミュンハン(Yoon Myung-Han)教授とKAISTの生物学・化学工学科(Department of Biological and Chemical Engineering )のキム・ボムジュン(Kim Bumjoon)教授率いる共同研究チームは、分子構造に適度な疎水性と構造安定性を提供するためにアルキルエチレングリコールのハイブリッド側鎖構造を取り入れた新しい混合伝導体材料を開発した。そして、微細構造制御プロセスを適用し、分子レベルで一方向に配列した混合伝導体薄膜を実現することで、世界最高の電気化学トランジスタ特性評価指標を持つ化学トランジスタの開発に成功した。
この研究成果は、有機混合伝導体の欠点として指摘されていた電気的性能の低さを克服しており、今後、有機材料を用いた高性能神経形態学的デバイスやバイオシグナルセンサーなど、高性能バイオエレクトロニクスデバイスの開発に大きく貢献することが期待される。
(2023年12月15日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部