2024年06月
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光架橋を用いて有機トランジスタの性能を向上 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は4月30日、同校化学工学科(Department of Chemical Engineering)のチョン・デソン(Chung Dae Sung)教授らが率いる研究チームが、光架橋(photocrosslinking)を用いて有機電界効果トランジスタ(OFET)の性能を向上させる画期的な技術を開発したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Scienceのオンライン版に掲載された。

有機分子の異性体間の変換特性を利用して電子の流れを分子レベルで制御する分子スイッチ(molecular switch)は、OFETの実用化の鍵となる技術として注目を集めている。しかし、スイッチ分子の、半導体層内に電子を捕獲して蓄える「深いトラップ(deep traps)」としての能力に限界があるため、保持時間を向上させることが困難であった。

この課題に対処するため、研究チームは、ジアリールエテン(diarylethene:DAE)の分子スイッチと有機高分子半導体の間で光によって誘発される化学結合を形成する画期的な方法を開発した。光を照射すると、DAEの末端に位置する2つの官能基(アジドとジアジリン)が半導体との化学結合を形成し、DAEの閉環異性体(closed isomer)を深いトラップ状態で安定させる。

この分子スイッチを組み込んだOFETは優れた耐久性を示し、100万秒以上にわたって安定した深いトラップ状態を維持した。さらに、光によりプログラム可能な(photoprogrammable)、22ボルトの電圧で1000を超えるオン/オフスイッチ比と優れたストレージ性能を示した。

このOFETの大きな特長に、光架橋を用いた精密なパターニングにより、半導体層の構造を細部まで制御できる点がある。研究者らはこの技術を、マイクロエレクトロニクスから光エレクトロニクスまで幅広い分野で利用できると考えている。

(出典:POSTECH)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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