韓国の光州科学技術院(GIST)は5月17日、米ニューヨーク州立大学バッファロー校との共同研究チームが、振戦治療のためのロボットリハビリテーションシステムを開発したと発表した。この研究成果は、神経リハビリテーション工学分野の国際的な学術誌であるIEEE TNSREに掲載された。
振戦は筋肉の制御に関連する神経疾患で、手や腕の震えを伴うことが多い。既存の薬物療法は副作用が多く、外科的な方法は、高いリスクを伴うほか、すべての患者に適応できるわけではない。最近では、ロボットを使ったリハビリ方法が提案されているが、日常生活における複雑な動作に十分対応していない。
今回開発された「SPINDLE(Spherical Parallel Instrument for Daily Living Emulation)」システムは、ユーザーのパフォーマンスに合わせて抵抗レベルを自動調整するロボットトレーニングシステムであり、振戦患者がさまざまな日常生活動作のシミュレーション練習を通じて筋肉を強化し、手の器用さを向上させられるようにする。6軸力/トルクセンサーによってユーザーの動きを計測し、バーチャルリアルティを通じてリアルタイムで視覚的なフィードバックを提供することで、効果的なトレーニングを可能にする。
抵抗レベルの最適な調整方法を決定するために健康な被験者を用いた実験では、カスタマイズされた抵抗で日常動作を行うと、単に小さい抵抗や大きい抵抗を用いた場合に比べ、被験者の筋電図信号が平均で少なくとも10~20%減少することが確認された。これは、カスタマイズされた抵抗により、少ない力で手の震えを抑えられることを示唆している。また、日常生活動作とSPINDLEとの間で、可動域に統計学的に有意な差はないことが明らかになった。
GISTの研究チームを率いた融合技術院(School of Integrated Technology)のカン・ジヨン(Kang Jiyeon)教授は、「SPINDLEシステムは小型(高さ42センチ、幅40センチ、長さ35センチ)で家庭でも簡単に使用でき、手の震えを伴う障害を持つ患者の日常生活を向上させることが期待される」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部