韓国の高麗大学校(Korea University)は8月6日、研究チームが、硫黄を最大限に利用できる新たな正極材料の開発により、寿命の長い高容量リチウム硫黄電池の製作に成功したと発表した。この研究成果は、Energy Storage Materialsに掲載された。
リチウム硫黄電池は、既存のリチウムイオン電池の2~3倍のエネルギー密度を実現できる電池であり、正極材料として使われる硫黄の豊富さと価格の安さから注目されている。この電池は、充放電時に硫黄と硫化リチウムの間で変換が起こることで動作するが、放電時に発生する硫化リチウムが炭素の表面を覆って電流の流れを妨げ、電池の性能劣化を引き起こすことが課題となっている。
この問題を解決するため、ムン・ジュンヒョク(Moon Jun-hyuk)教授率いる研究チームは、炭素表面との接触を最小限に抑えて硫化リチウムが形成されるようにするために、界面エネルギーを制御する方法として正極に酸化ニオブ(Nb2O5)を含めた。開発した正極を組み込んだリチウム硫黄電池は、硫黄利用率90%以上を達成し、その正極容量はリチウムイオン電池の2倍となる約10 mAh/cm2に達した。
ムン教授は、「我々が提示した解決策は、正極のメカニズムに基づいたシンプルなものであり、リチウム硫黄電池の実用化に貢献することを期待している」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部