韓国エネルギー技術研究院(KIER)は9月20日、同院の研究チームが都市送電網の安定性問題に対処するため、人工知能(AI)を利用したエネルギー管理アルゴリズムとシステムを開発したと発表した。この研究成果は、建築学分野の国際学術誌Sustainable Cities and Societyに掲載された。
都市電化は、化石燃料の使用を減らし、建物一体型ソーラー技術などの再生可能エネルギーを導入して、都市のエネルギーシステムを変革することを目指す。しかし、再生可能エネルギーへの依存度が高いと、天候の変化によるエネルギー供給の変動が大きくなり、送電網の安定運用が難しくなる。
この課題に対処するため、再生可能エネルギーシステム研究所(Renewable Energy System Laboratory)とエネルギーICT研究部(Energy ICT Research Department)の共同研究チームはまず、AIを使って建物の種類別のエネルギー消費パターンと再生可能エネルギーの生産パターンを分析した。また、天候や人間の行動パターン、再生可能エネルギー施設の規模や稼働状況といった複雑な変数が、送電網にどのような影響を与えるかを解明した。注目すべき点として、突発的な寒波や猛暑のように、発生頻度は低いが大きな影響をもたらす「低確率・高影響事象」が送電網の全体的な安定性と運用コストに決定的な影響を与えることが明らかになった。
こうした分析結果に基づいて開発したアルゴリズムをシステムに実装し、都市電化を再現した環境に適用したところ、エネルギー自給率38%、自家消費率58%を達成した。この結果は、このシステムを導入していない建物のエネルギー自給率20%、自家消費率30%に比べて大幅な改善である。また、電気料金も18%削減され、送電網の安定性も大幅に向上した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部