韓国科学技術院(KAIST)は11月8日、同院の研究チームがシステム代謝工学を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代わる疑似芳香族ポリエステルモノマーを効率的に生産する微生物株の開発に成功したと発表した。この研究成果は、国際的な学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences of United States of Americaに掲載された。
イ・サンヨプ(Lee Sang Yup)特別教授(右)と研究者ら
擬似芳香族ジカルボン酸は、芳香族ポリエステル(PET)に比べ、ポリマーとして合成した際の物理的特性に優れ、生分解性も高いことから、環境に優しいモノマーとして注目されている。しかし、化学的手法による製造には、収率や選択性が低い、反応条件が複雑、有害廃棄物が発生するなどの問題がある。
この問題を解決するため、化学・生体分子工学科(Department of Chemical and Biomolecular Engineering)のイ・サンヨプ(Lee Sang Yup)特別教授率いる研究チームは、代謝工学的手法を用いて、5種類の擬似芳香族ジカルボン酸を効率的に生産するコリネバクテリウム(Corynebacterium)の微生物株を開発した。コリネバクテリウムは、主にアミノ酸生産に使用される微生物である。
イ教授は、研究の意義として環境に優しい技術である点を強調し、「この研究は、将来的に微生物をベースとしたバイオモノマー産業が石油化学ベースの化学産業に取って代わるのに役立つだろう」と述べた。
図:代謝改変型C. glutamicumを用いた擬似芳香族ジカルボン酸生産の概要
(出典:いずれもKAIST)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部