韓国エネルギー技術研究院(KIER)は11月14日、同院の研究チームが使用済み電池の従来のリサイクル方法の限界を克服する、費用対効果が高く環境に優しいリサイクルプロセスを開発したと発表した。この研究成果は、学術誌Advanced Energy Materialsに掲載された。
従来の電池リサイクルでは、使用済み電池を破砕し、化学処理によってリチウム、ニッケル、コバルトなどの有価金属を抽出する方法が一般的であった。しかし、高濃度の化学薬品が必要で廃水が発生するほか、高温の炉を必要とするためにエネルギー消費も大きく、二酸化炭素排出量も多い。そのため、化学的な変化を加えることなく元の素材を回収・復元する直接リサイクル技術が関心を集めているが、高温・高圧を必要とし、複雑な手順を伴うため、時間とコストがかかるという欠点がある。
KIER光州クリーンエネルギー研究センター(Gwangju Clean Energy Research Center)のウ・ジョンジェ(Woo Jung-Je)博士率いる研究チームは、従来のリサイクル方法の限界を解決するシンプルなプロセスによって、使用済みリチウムイオン電池から正極材料を直接リサイクルする新たな技術を開発した。
このプロセスでは、復元溶液を用いた電解腐食のプロセスを応用することにより、使用済み正極を常温・常圧下で復元溶液に浸して元の状態に復元し、リチウムイオンを効果的に補充する。使用済み電池を解体する必要がある従来の方法とは異なり、復元反応は電池内で直接行われるため、リサイクルプロセスの効率が大幅に向上する。電気化学的性能試験では、復元された正極が新材料と同等の容量を達成したことが確認された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部