2025年01月
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がん細胞を正常細胞に回復させる基盤技術を開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は、生物・脳工学科(Department of Bio and Brain Engineering)のチョ・クァンヒョン(Cho Kwang-Hyun)教授率いる研究チームが、がん細胞を殺すことなく正常な大腸細胞に似た状態に転換することで、副作用を回避しながら大腸がんを治療できる画期的な技術を開発したと発表した。この研究成果は、学術誌Advanced Scienceのオンライン版に掲載された。

チョ・クァンヒョン(Cho Kwang-Hyun)教授(中央)と研究チームのメンバーら
(出典:KAIST)

現在のがん治療の共通の目標はがん細胞を除去することだが、がん細胞が耐性を獲得して再発したり健康な細胞が破壊され重大な副作用が生じたりするなどの根本的な限界がある。

研究チームは、がん化の過程で正常細胞が分化の軌跡に沿って退行するという観察結果に着目し、正常細胞の分化に関連する遺伝子ネットワークのデジタルツインを作成する技術を開発した。作成したデジタルツインを使ったシミュレーション解析により、正常細胞の分化を誘導するマスター分子スイッチを特定して大腸がん細胞に適用したところ、がん細胞は正常に似た状態に戻った。この結果は、細胞実験と動物実験で確認された。

今回の研究は、がん細胞遺伝子ネットワークのデジタルツインを分析・活用することで、偶然の発見に頼らずにがん細胞の正常化を体系的に誘導できることを示しており、さまざまなタイプのがんに応用可能ながん治療法の開発につながることが期待される。

(2024年12月20日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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