2025年03月
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骨をヒントに「使うことで強くなる」新材料を開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は2月22日、材料科学・工学科(Department of Materials Science and Engineering)のカン・スンフン(Kang Sung Hoon)教授率いる研究チームが、米国のジョンズ・ホプキンス大学およびジョージア工科大学と共同で、繰り返し使用することで強度が高まる新材料を開発したと発表した。この研究成果は、学術誌Science Advancesに掲載された。

従来の材料は、繰り返し荷重がかかると劣化し、故障や破損につながる。この問題に対処するため、カン教授のチームは、ストレスを受けると細胞が骨の強化につながるミネラルを形成する生物学的プロセスにヒントを得て、ストレス下でミネラルを合成する材料を開発した。

細胞の機能を代替するため、研究チームは、機械的な力を電気に変換し、大きな力がかかるほど多くの電荷を発生させる多孔性の圧電基板を作成した。次に、血液に含まれる成分に似たミネラル成分を含む電解質を基板に注入して複合材料を合成した。この材料に周期的な力を加え、その特性の変化を測定したところ、圧力の頻度や大きさに比例して剛性が増し、エネルギー散逸能力が向上することが確認された。これは、繰り返し圧力を受けると、多孔質材料の内部にミネラルが形成されるためであることが判明した。

図1. 骨とウツボカズラに着想を得た生体模倣コンセプトの概略図、可逆的な強化メカニズム、多孔質複合材料の製造プロセス、繰り返し荷重による剛性とエネルギー吸収の変化、再プログラム可能な自己折り畳みメカニズムとその応用

繰り返しの使用で弱くなる従来の材料とは異なり、この新材料は、時間の経過とともに剛性と衝撃吸収性が同時に向上する。さらに、かかる圧力の大きさと頻度に比例して特性が向上するため、さまざまな構造用途に適した機械的特性分布を達成するように自己調整することができる。また、自己修復機能も備えている。

カン教授は、「この材料は、人工関節はもちろん、航空機、船舶、自動車、構造工学にも応用できる大きな可能性を秘めています」と語った。

図2. 新材料(LIPPS)と他の材料の繰り返し荷重下での特性変化の比較
(A) 繰り返し荷重後のエネルギー吸収の相対変化率と、除荷時の弾性率の相対変化率を示すグラフ。LIPPSは既存の材料が到達していない新たな領域に位置し、弾性率とエネルギー吸収が同時に増加する特性を示す
(B) LIPPSと最新の力学的適応材料の性能比較グラフ
(左) 繰り返し荷重後の基準値に対する最大特性変化率。LIPPSは、既存の適応材料と比較して、弾性率、吸収エネルギー密度および比率、靭性(耐衝撃性)、蓄積エネルギー密度の変化が大幅に大きい
(右) 繰り返し荷重の前後における特性の絶対値範囲。LIPPSは、既存の適応材料よりも高い弾性率と靭性を示す
(出典:いずれもKAIST)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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