2025年04月
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微生物を用いて環境に優しいプラスチックを製造する技術を開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は3月24日、化学・生体分子工学科のイ・サンヨプ(Sang Yup Lee)特別教授の研究チームが、微生物を利用して環境に優しいバイオベースプラスチックの製造に成功したと発表した。研究成果は学術誌nature chemical biologyに掲載された。

研究チームが開発したのはポリエステルアミドというプラスチックだ。ポリエステルアミドは広く使用されているPET(ポリエステル)とナイロン(ポリアミド)の特性を併せ持つ次世代素材として知られており、化石燃料に依存して製造されている。

研究では、微生物には本来存在しない代謝経路を新たに設計し、9種類のポリエステルアミドを生合成できるプラットフォーム微生物株を開発した。これにより、廃木材や雑草などのバイオマス由来のグルコースを原料とした持続可能なポリエステルアミド製造方法が実現した。研究チームはこの微生物株を用いた流加培養によって54.57g/Lという高い生産効率を実証し、工業スケールでの応用可能性も確認している。

また、韓国化学研究院(KRICT)との共同で得られたプラスチックの物性を分析し、高密度ポリエチレン(HDPE)に類似する強度と耐久性を持つことを確認した。これは従来の石油由来プラスチックに代わる環境負荷の少ない素材としての実用性を示している。

イ教授は「この研究は、再生可能なバイオベースのプロセスを通じてプラスチックを生産する可能性を示した最初の研究です。今後はさらなる生産性向上を目指して研究を続けていきます」と述べた。本研究は韓国科学技術情報通信部(MSIT)の支援を受け、バイオケミカル産業をリードする次世代バイオリファイナリー技術開発イニシアチブの支援を受けて進められた。

図1. ポリエステルアミド(PEA)生産のための新しい自然代謝経路
(出典:KAIST)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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