2025年07月
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他者への共感能力を高めるパーソナライズAIを開発 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は6月18日、個人の性格や価値観を分析し、他者の感情を理解するパーソナライズ型AI「EmoSync」を開発したと発表した。

現代社会では、多様な背景を持つ人々が共存している。そのため同じ状況にあっても人の感情は異なり、他者の感情を理解することは容易ではない。従来の共感AIは、同様の経験が同様の感情を引き起こすという仮定に基づいていたが、現実はより複雑であるため、POSTECHの研究チームはこうした前提を乗り越える新技術を開発した。

EmoSyncは、大規模言語モデル(LLM)を基盤とする感情翻訳エージェントである。ユーザーの心理的特性や感情反応パターンを分析し、それぞれに適した比喩的なシナリオを生成することで、他者の感情を自身の体験に引き寄せて理解できるようにする。たとえば、職場での微妙な差別や排除に共感できないユーザーには、過去の学校生活で仲間外れにされた経験などを引き出し、共感しやすくなるよう感情の橋渡しを行う。

研究チームは、この技術を用いて100人以上を対象とした実験を行い、従来手法と比較して、EmoSyncを用いた参加者は他者の感情理解や共感の度合いが有意に向上するという結果が示された。これは、個別化された比喩体験が共感能力を高めることを科学的に裏付ける成果である。

(出典:POSTECH)

筆頭著者であるPOSTECHコンピュータサイエンス・エンジニアリング学科博士課程のチュ・ヒョジン(Hyojin Ju)氏は「我々の研究は、AIが人々の真の理解と共感を促進できることを示しています」と述べた。指導教員であるファン・インソク(Inseok Hwang)教授は「生成AIがユーザー固有の感情構造を識別し、特定の感情を引き出す体験を創出できることを示した画期的な研究です」と語った。

本研究は、韓国研究財団(NRF)の中堅研究者プログラム、韓国の科学技術情報通信部(MSIT)による未来融合技術パイオニアプロジェクトおよび大学ICT研究センター事業の支援を受けている。また、研究成果は米国計算機学会(ACM)が主催する国際会議ACM CHI 2025のインタラクショントラックにおいて上位5%に選ばれた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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