韓国科学技術院(KAIST)は7月1日、膠芽腫に対する免疫療法の効果を腸内細菌叢の調整によって高める新たな治療戦略を発表した。研究成果は学術誌Cell Reportsに掲載された。

KAIST生物科学科のイ・フンギュ(Heung Kyu Lee)教授(左)
膠芽腫は、脳腫瘍の中でも特に致死率が高く、免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法が単独では効果を示しにくい難治性がんとされている。KAIST生物科学科のイ・フンギュ(Heung Kyu Lee)教授が率いる研究チームは、腸内微生物叢に着目し、治療反応性を向上させる手法を実証した。

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研究チームは、膠芽腫の進行に伴い腸内のトリプトファン濃度が著しく低下し、それによって腸内細菌の構成が変化することを突き止めた。トリプトファンを補給することで微生物多様性を回復させ、有益な細菌が免疫細胞の一種であるCD8 T細胞を活性化し、腫瘍組織への浸潤を促進することが確認された。CD8 T細胞は、異常な細胞を直接攻撃する細胞障害性T細胞であり、がん免疫において重要な役割を担う。
さらに、腸内常在菌Duncaniella dubosiiがT細胞の再分布を助ける重要な役割を果たすことも明らかとなった。この細菌を免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体と併用した場合、マウスの生存率が大幅に向上した。抗PD-1抗体は、T細胞の働きを抑制するPD-1という分子を阻害し、免疫反応を活性化させる薬剤である。また、同細菌を無菌マウスに単独投与した場合でも治療効果が見られた。これは、細菌がトリプトファンを代謝して免疫応答を高める物質を生成し、CD8 T細胞のがん細胞攻撃能力を強化するためである。

(出典:いずれもKAIST)
同教授は「免疫チェックポイント阻害剤が効果を示さない膠芽腫に対しても、腸内細菌を活用することで免疫療法の効果を大きく引き出せる可能性を示しました」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部