韓国科学技術院(KAIST)は7月9日、KAISTの生物科学科の研究チームが、腸から吸収されたグルコースを脳が選択的に識別できる神経回路を発見し、肥満や糖尿病の新たな治療法の可能性を示したと発表した。研究成果は科学誌Neuronに掲載された。
本研究は、グレッグ・SB・スー(Greg S.B Suh)教授らのKAISTの研究チームと、米国のアルバート・アインシュタイン医科大学の研究チームにより共同で進められた。

KAISTのグレッグ・SB・スー(Greg S.B Suh)教授(左)と研究チームメンバーら
これまで、腸からの栄養情報は総カロリー情報が脳の視床下部の空腹ニューロンを抑制し、食欲を調節することが示されていたが、グルコースに特異的に反応する腸-脳回路と、それに対応する脳細胞の存在は分かっていなかった。本研究では、マウスを用いた光遺伝学の実験により神経活動をリアルタイムに正確に観察することで、脳がグルコースのみを選択的に感知し、それに応じて摂食行動を変化させる腸-脳回路の存在を明らかにすることに成功した。
この回路では、小腸でのグルコース感知が脊髄を経由して脳の背外側橋傍核(PBNdl)を通り、CRFニューロンへと信号を伝達する構造を持つ。一方、脂肪やアミノ酸の信号は迷走神経を介して伝達されることが確認された。さらに、CRFニューロンを光遺伝学的に抑制すると、空腹状態のマウスでもグルコースへの嗜好が消失することから、この回路がグルコース特有の識別に不可欠であることが証明された。

(出典:いずれもKAIST)
同教授は「グルコースに特化した腸から脳への経路を特定することで、本研究は肥満や糖尿病といった代謝性疾患の新たな治療標的を提供するものです。今後の研究では、アミノ酸や脂肪といった他の必須栄養素を感知する同様の回路と、それらの相互作用メカニズムを探求していきます」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部