韓国の浦項工科大学(POSTECH)は7月16日、量子力学における「トンネル効果」中の電子の振る舞いを世界で初めて実験的に解明し、電子が障壁内で原子核と再衝突することを確認したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Lettersに掲載された。
量子トンネル効果とは、電子が本来通過できないはずのエネルギー障壁を抜ける現象であり、半導体や核融合、量子計算などの基礎をなす重要な原理である。しかし、電子が障壁を通過する前後の挙動については理解が進んでいた一方、通過中の動きは長らく不明のままだった。
POSTECH物理学科のキム・ドンオン(Dong Eon Kim)教授の研究チームは、ドイツのマックス・プランク原子核物理学研究所のCHカイテル(C. H. Keitel)教授らと共同で、強力なレーザーパルスを用いて原子内の電子にトンネル効果を誘起する実験を行った。
その結果、電子はトンネルを単に通過するのではなく、内部で原子核と再び衝突するという障壁下再衝突(UBR)が確認された。これは従来、電子と原子核の相互作用は障壁通過後にのみ起きるとされてきた定説を覆す発見である。
さらにこの過程で、電子は障壁内でエネルギーを獲得し、「フリーマン共鳴」と呼ばれる共鳴を強めることがわかった。この電離現象は既存の理論では予測できず、レーザー強度の変化に対しても安定していたという。

(出典:POSTECH)
同教授は「今回の研究を通じて、電子が原子壁を通過する際の挙動に関する重要な手がかりを得ました。これによって、トンネル効果をより深く理解し、制御することが可能になります」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部