2025年10月
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12分充電で800km走行可能なリチウム金属電池を開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は9月4日、LGエネルギーソリューション(LG Energy Solution)社と共同で、リチウム金属電池の急速充電時に課題となっていたデンドライト現象を抑制する新規電解質を開発し、電気自動車(EV)用リチウム金属電池の性能を大幅に向上させたと発表した。研究成果は学術誌Nature Energyに掲載された。

KAISTのキム・ヒタク(Hee Tak Kim)教授(前列中)と研究チームメンバーら

EV用バッテリーに使われる従来のリチウムイオン電池は最大航続距離が600km程度に限られていた。今回開発されたリチウム金属電池は1回の充電で800kmの走行が可能で、寿命は30万km超、さらに12分の超急速充電を実現した。これまで、リチウム金属電池は高エネルギー密度を持つが、充電中に負極表面に成長する樹枝状のリチウム結晶であるデンドライトが寿命や安全性を低下させることが、実用化に向けた課題となっていた。

共同研究チームは、急速充電時のデンドライト形成の根本原因がリチウム金属表面における不均一な界面凝集にあることを突き止めた。これを解決するため、リチウムイオンとの結合が弱いアニオン構造を利用した「凝集抑制型新液体電解質」を設計し、界面の不均一性を抑制することでデンドライト成長を効果的に防止した。

この技術により、従来のリチウム金属電池の制約であった充電速度の遅さを克服しつつ、高エネルギー密度と安定性を維持することに成功した。今後は高速充電で、長距離走行と安定した動作の両立が可能な次世代EVバッテリーとしての応用が期待される。

図1. フロンティア研究ラボ(FRL)リチウム金属電池技術のインフォグラフィック
(出典:いずれもKAIST)

LGエネルギーソリューションのキム・ジェヨン(Je-Young Kim)CTOは「4年間の共同研究により有意義な成果が生まれました。今後も産学連携を強化し、次世代バッテリー分野で最高の成果を目指していきます」と述べた。また、KAISTのキム・ヒタク(Hee Tak Kim)教授は「界面構造の理解が、リチウム金属電池の技術的課題を克服するための重要な基盤となりました。EV用リチウム金属電池実用化の最大の壁を乗り越えることができました」と語った。

本研究は、KAISTとLGエネルギーソリューションが2021年に設立したフロンティア研究ラボ(FRL)で実施された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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