2025年10月
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AIで持続可能なペロブスカイト太陽電池を実現 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は9月17日、同国のソウル市立大学と共同で人工知能(AI)を活用した低コスト・高効率のペロブスカイト太陽電池の製造プロセスを開発し、持続可能な商業化に向けたロードマップを提示したと発表した。研究成果は学術誌Green Chemistryに掲載された。

太陽光発電は、CO2排出を削減できる主要な再生可能エネルギー源とされている。中でも「次世代太陽電池」と呼ばれるペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン型を上回る理論効率34%が期待されている。しかし、製造過程で有毒なジメチルホルムアミド(DMF)を使用することや、長期安定性が十分でないことが商業化の障害となってきた。

POSTECH化学工学科のハン・ジフン(Han Jeehoon)教授率いる研究チームとソウル市立大学化学工学科の共同研究により、バイオ由来の無毒溶剤を用いた新しい「GVL-EAプロセス」が開発された。このプロセスでは、ガンマバレロラクトン(GVL)や酢酸エチル(EA)を用いてDMFを代替することで、従来よりも安全かつ環境負荷の少ない製造を可能にした。

本研究の核となるのは、AIによるリバースエンジニアリング技術である。研究チームは実験データを解析し、効率を高めつつコストと炭素排出量を抑える最適条件を導き出した。その後、AIが提案した条件を実験で検証し、製造コスト、環境影響、プロセス効率を総合的に評価する持続可能性モデルと、地域ごとの導入シナリオを提示した。

その結果、GVL-EAプロセスを採用した場合、製造コストは従来の半分に削減され、気候への影響も80%以上低減できることが確認された。さらに、モジュール寿命やリサイクル戦略を考慮することで、商業化の実現可能性をより現実的に評価できることが示された。

(出典:いずれもPOSTECH)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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