韓国の基礎科学研究院(IBS)は9月24日、IBS気候物理学センター(IBS Center for Climate Physics: ICCP)の研究チームが、地球温暖化によってデイ・ゼロ干ばつ(DZD)の発生リスクが今後数十年で急増し、都市・農業・生活用水を脅かすとする解析結果を発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

都市部における極端な干ばつ状況と予測される水不足のイメージ
研究チームは、最新世代の気候モデル群を用いて、降水・河川・貯水池からの地域水供給が需要を下回る時期を示すDZDの発生を全球で特定した。解析は、長期的な降雨不足、河川流量の減少、水消費量の増加といった水文学的な複合極端現象に焦点を当て、地下水貯留層を除外して進められた。その結果、地中海、南アフリカ、北米の一部にDZDのホットスポットが集中していることが明らかになった。特に都市部は脆弱であることも示された。
シミュレーションでは、脆弱地域の35%で今後15年以内にDZDが発生する可能性が高いとされている。さらに2100年頃までに、世界で約7億5000万人が影響を受けると見積もられ、その内訳は都市部で約4億7000万人、農村部で約2億9000万人に達すると予測された。その中で地中海地域は都市部への影響が最も大きく、アフリカ北部・南部、そしてアジアの一部では農村部への影響が深刻となる。
また、水文学的ストレスの増大により、主要貯水池の14%が最初のDZD発生時に干上がる可能性が示唆された。ICCPは、ケープタウン(2018年)やチェンナイ(2019年)がDZDに迫った事例に触れ、発生時期と地域を把握したうえでの適応策立案の重要性を強調する。
本研究の筆頭著者で博士課程学生のラヴィナンドラサナ(Ravinandrasana)氏は「地球温暖化が世界中でデイ・ゼロ干ばつを引き起こし、それを加速させていることを示しています。1.5℃目標を満たしても、数億人が前例のない水不足に直面します。早急な適応と持続可能な水管理がなければ、何億人もの人々が将来、前例のない水不足に直面する可能性が高いでしょう」と述べた。

Day Zero Drought(DZD)条件の初出現時期(ToFE)と世界のホットスポット地域
(a) 1900年から2100年までのDZDイベントの10年ごとの初出現時期(ToFE)の世界的分布。色の濃淡は、DZDが人為的気候変動に統計的に起因するようになる最初の10年を示す。ここで、人為的気候変動によるリスク寄与率(Fraction of Attributable Risk, FAR)が0.99以上(FAR ≥ 0.99)となる最初の10年を定義としている。灰色の領域は、2100年までに人為的気候変動に起因するDZDイベントが出現すると予測されないグリッドセルを示す。
(b) 円形図は、10年ごとのToFEの時間分布を示す。色のスケールは、1900年から2100年までの各10年にToFEを経験するDZDグリッドセル(陸地面積)の割合を示している。これにより、ToFEが時間的にどのように分布しているか、DZD出現の傾向を把握することができる。
(出典:いずれもIBS)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部