韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は9月30日、これまで均一な一相と考えられてきた超臨界流体内で、ナノメートルサイズの液体クラスターが存在することを実験的に示したと発表した。研究成果は学術誌Communications Physicsに掲載された。
超臨界流体は、物質の温度と圧力が臨界点を超え、液体と気体の区別がなくなる状態を指す。従来は単一の均一な状態として理解されてきたが、POSTECH先端原子力工学部門および物理学部のユン・グンス(Gunsu Yun)教授らの研究チームは、超臨界流体内における非平衡相分離を実験的に確認した。
本研究は、韓国原子力研究院(KAERI)のチョン・デジャン(Jong Dae Jang)博士、慶熙大学校のハ・ミンヨン(Min Young Ha)教授、米国オークリッジ国立研究所(ORNL)のド・チャンウ(Changwoo Do)博士らとの共同研究によるものだ。チームは韓国の多目的研究炉HANAROに設置された小角中性子散乱(SANS)装置を用い、クリプトンガスを高圧下で圧縮して生成した超臨界流体を観察した。
観測の結果、平均1.3nmの大きさを持ち、液体のような性質を示すクラスターが確認された。これはおよそ30個のクリプトン原子が集合したものに相当し、約1時間持続した後に消滅した。この現象は、これまで均一と考えられてきた超臨界流体において、非平衡状態下で相分離が起こり得ることを示す初の実験的証拠となった。
ユン教授は「この研究成果は、産業プロセスの最適化に貢献するだけではなく、巨大ガス惑星の大気や地球の地下流体といった極限自然環境の理解にも役立つでしょう」と述べた。

(出典:POSTECH)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部