2025年11月
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網膜静脈閉塞症を再現、3Dバイオプリント網膜モデルを開発 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は10月29日、韓国の恩平聖母病院と韓国外国語大学校と共同で、網膜静脈閉塞症(RVO)の病態を忠実に再現できる3Dバイオプリント網膜オンチップモデルを開発したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Composites and Hybrid Materialsに掲載された。

RVOは世界中で視力喪失の主な原因の1つであり、高血圧や糖尿病などを背景に発症し、浮腫や炎症、異常血管新生を引き起こして不可逆的な失明に至ることがある。治療には抗VEGF注射やレーザー療法が利用可能であるにも関わらず、生体に近い疾患モデルが不足していることから、損傷組織の完全な回復が難しいという課題があった。研究チームは、POSTECH機械工学科のチョ・ドンウ(Dong-Woo Cho)教授らが中心となり、網膜脱細胞化細胞外マトリックス(RdECM)を用いたバイオインクと統合型3Dバイオプリンティング技術を組み合わせ、血管層と神経層を備えた網膜オンチップを作製した。

チップ内に血管閉塞を形成すると、炎症、バリア機能不全、異常血管新生など、RVO特有の病態が再現された。さらに、内皮細胞と網膜細胞の相互作用をリアルタイムで観察でき、臨床患者で見られる血管漏出や浮腫に類似した反応も確認された。モデルでは血管内皮の選択的透過性が失われ、RVO患者の病理変化と一致する挙動を示した。

加えて、アスピリン、デキサメタゾン、ベバシズマブなどの薬剤を投与したところ、臨床症例と整合する薬理反応が観察された。アスピリンは血管損傷を抑制し、デキサメタゾンとベバシズマブは炎症や異常血管新生を減少させた。このことから、開発されたモデルが前臨床段階での薬効評価や患者ごとの治療スクリーニングに有効であることが示された。

(出典:POSTECH)

研究チームは、本モデルがRVOの病因解明、新規治療薬の探索、動物実験の削減に貢献すると期待している。また、臓器特異的dECMバイオインクが複雑なヒト組織環境を再現できることを示す成果ともなっている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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