韓国の漢陽大学校は10月29日、同校の研究チームが硫化物系全固体電池において、正極保護層の組成と導電性および電池性能との間に定量的相関関係があることを初めて特定したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Scienceに掲載された。
硫化物系全固体電池は高エネルギー密度と安全性から次世代電池として注目されているが、正極活物質と固体電解質の界面不安定性が性能向上の課題となっている。漢陽大学校材料科学・化学工学部のパク・テジュ(Tae-joo Park)教授らの研究チームは、NCM811正極表面にPowder-ALD法を用いて組成の異なるLiZrOx保護層を形成した。Li/Zr比の異なる保護層を比較した結果、イオン伝導性は最大20倍、電子伝導性は最大1000倍の差が生じ、これらが初期クーロン効率や容量維持率に直接影響していることが分かった。最適組成では初期効率が約4.5%向上し、寿命性能も37%改善する。これらの結果から、保護層の組成が電池性能を決定づける重要因子であることが示された。
本研究は、保護層組成が導電性を変化させ、さらに電池性能向上につながるという因果関係を定量的に示した初の例であり、従来のコーティングの有無や厚さに着目した研究から一歩進んだ、組成主導型インターフェース工学の方向性を提示した。同教授は「本研究は制御された保護層組成がセル性能に与える影響を定量化した初めての研究です。この結果は硫化物系全固体電池において界面安定性と高エネルギー密度を実現するための重要な設計原理を確立するものです」と説明する。
さらに、Powder-ALD法を電極粉末へ直接適用する技術の量産適性も実証された。同手法は大面積電極へのコーティングに適し、コーティング技術の産業応用を加速する可能性がある。同教授は2022年にALPES社を設立し、この技術の商業化を進めており、半導体後工程材料、化粧品、医薬品など多様な分野へ応用展開している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部