2026年01月
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世界最小の完全ワイヤレス神経インプラントを開発 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は、研究チームが塩粒より小さい完全ワイヤレス型の超小型神経インプラント「MOTE(Micro-Scale Opto-Electronic Tetherless Electrode)」を開発し、実験用マウスで1年間の安定した脳波計測に成功したと発表した。研究成果は学術誌Nature Electronicsに掲載された。

KAISTのイ・ソンウ(Sunwoo Lee)教授(左)とコーネル大学のアリョーシャ・モルナー(Alyosha Molnar)教授

人間の脳では、約1000億個の脳細胞が化学信号と電気信号を交換し、記憶や判断などの精神活動を生み出している。これらの微細な電気信号を精密に読み取る神経インプラント技術は、神経変性疾患の研究と治療に不可欠とされる。一方、従来のインプラントは太いワイヤー構造による脳内での動きが炎症や信号劣化を招き、サイズや発熱の問題も相まって長期使用に限界があった。

KAIST材料科学工学科共同教授であり、シンガポールの南洋理工大学(NTU)電気電子工学部にも所属するイ・ソンウ(Sunwoo Lee)教授と、米国コーネル大学のアリョーシャ・モルナー(Alyosha Molnar)教授の研究チームは、既存の半導体プロセスである相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を基盤とした超小型回路に、独自開発のマイクロLEDを組み合わせることで大幅な小型化を実現した。特殊な表面コーティングを施して生体環境下での耐久性も高め、厚さ100µm未満、体積1nL未満という、現時点で報告されている中では世界最小レベルのワイヤレス神経インプラントを完成させた。

MOTEはバッテリーを用いず、外部光から電力を得て脳波を検出し、パルス位置変調(PPM)によって光信号として外部へ送信する仕組みを備える。この方式によりエネルギー消費や発熱が抑えられ、電池交換の必要もない。研究チームはマウス脳内で1年間の長期実験を行い、脳波が正常に計測され続けたこと、周囲組織の炎症がほとんど見られなかったこと、装置の性能劣化が確認されなかったことを明らかにした。同装置が生体内で長期的に機能を維持した明確な実証は今回が初めてとされる。

塩結晶上のMOTE神経インプラント(左)と実験用マウスに296日間埋め込まれた後のMOTE神経インプラント(右)
(出典:いずれもKAIST)

イ教授は「完全ワイヤレスの超小型インプラントを実際に実現したことに大きな意義があります。本成果は開発・運用の過程で生じる未知の課題に対しても解決できる技術的可能性を示すものです」と話した。

(2025年11月27日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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