韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は1月15日、研究者らが超高速ドップラー超音波を用いて肝臓内の微小血管構造を3次元的に可視化し、脂肪肝疾患の進行度を高精度に評価できる超音波診断技術を開発したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。
脂肪肝疾患は、肝臓への脂肪蓄積を特徴とする慢性肝疾患であり、進行すると炎症、肝線維化、肝硬変、肝細胞癌へと至る可能性がある。一方で初期段階では自覚症状が乏しく、早期かつ正確な評価が課題とされてきた。従来の超音波検査は肝臓の脂肪蓄積を簡便に評価できるが、検査実施者への依存度が高く、磁気共鳴画像法(MRI)と比べて診断精度に限界があるとされている。
こうした課題に対し、POSTECHの研究チームは、脂肪肝疾患の進行過程で生じる微小血管の変化に着目し、肝臓の血管構造を3次元的に可視化する超音波技術を開発した。この技術では、毎秒数千フレームの画像を取得する超高速ドップラーイメージング(UFD)を用い、毛髪よりも細い血管内の血流を高感度に捉えることができる。

脂肪肝疾患の診断および経過観察のための3次元マルチパラメータ超音波画像診断システムの概要
(出典:POSTECH)
さらに、肝臓内の脂肪蓄積を評価する減衰イメージング(ATI)や、組織の微細構造を定量的に解析する音響構造定量化(ASQ)と組み合わせ、血管情報と組織情報を統合した3次元マルチパラメータ超音波画像診断システムを構築した。研究チームはこのシステムを用い、脂肪肝疾患の進行を8週間にわたり縦断的に追跡し、肝組織および微小血管の3次元的な変化を高い再現性で可視化できることを示した。
定量解析では、血管指標と脂肪肝の程度との間に強い相関が確認され、複数の超音波パラメータを機械学習で統合することで、脂肪肝疾患の重症度を平均92%の精度で分類できたとしている。
本研究を率いたIT融合工学科および融合科学技術大学院に所属するアン・ヨンジュ(Yong-Joo Ahn)教授は、「微小血管の変化の早期発見と活用を可能にすることで、このアプローチは精密医療の新たな可能性を切り開き、さまざまな肝疾患へのより広範な応用が期待されます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部