韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は2月4日、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸の酪酸が濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)を活性化して抗体産生を促進し、粘膜ワクチンの有効性を高める仕組みを解明したと発表した。研究成果は学術誌Microbiomeに掲載された。
粘膜ワクチンは、腸や呼吸器など感染が起こりやすい粘膜表面で直接免疫応答を誘導できる接種法である。一方、抗原が胃内の厳しい環境や粘液バリアを通過し、腸の免疫寛容環境を克服する必要があるため、高用量抗原や強力なアジュバント(免疫反応を高める補助成分)、複雑な送達系が求められるという課題があった。
POSTECHとイミュノバイオーム(ImmunoBiome)社の共同研究チームは、小腸のパイエル板由来Tfh細胞が脾臓由来Tfh細胞よりも強いIgA抗体産生誘導能を持つことを確認した。抗生物質ネオマイシンにより特定の細菌群を減少させると、糞便中IgA量とTfh細胞頻度はいずれも低下し、糞便微生物移植により回復した。解析の結果、酪酸を産生するLachnospiraceaeとRuminococcaceaeがTfh-IgA軸の維持に関与する主要な細菌群であることが示された。

(出典:POSTECH)
さらに、酪酸はTfhの分化とIgA陽性胚中心B細胞の形成を促進し、粘膜IgA産生を増強することが分かった。酪酸のプロドラッグ(体内で代謝されて有効成分に変換される前駆体)であるトリブチリンを投与すると、IgA応答とSalmonella Typhimurium感染に対する防御が有意に強化され、感染率と組織損傷が減少した。この効果はGPR43欠損細胞では認められず、酪酸-GPR43シグナル経路がTfh活性化とIgA誘導を媒介していることが確認された。
研究を主導したイム・シンヒョク(Sin-Hyeog Im)教授は「私たちの研究結果は、腸内細菌が単なる受動的な常在菌ではなく、免疫系を積極的に調節する因子であることを示しています。微生物代謝物は抗体産生やワクチン有効性に不可欠な免疫細胞の機能を直接強化できます」と述べ、微生物叢に基づくアジュバントや次世代粘膜ワクチンの開発を目的とし、関連研究に取り組んでいることを明らかにした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部