韓国の漢陽大学校は3月10日、機械工学科の研究チームが、リチウムイオン電池パック内で起こる熱暴走の遷移と伝播を、高精度かつ高速に予測できるシミュレーションフレームワークを開発したと発表した。研究成果は2026年5月に学術誌eTransportationに掲載予定である。
電気自動車や電力貯蔵システム(ESS)の普及に伴い、リチウムイオン電池の火災安全性の確保は重要な課題となっている。だが、電池メーカーが安全性確認のために行う実火災試験は1回当たり数億ウォンの費用がかかり、リスクも大きい。一方で従来の計算解析による予測技術は、計算に数十日を要することが多く、設計段階での活用が難しかった。
研究チームは、内部の熱移動、化学反応、ガス発生といった複雑なマルチフィジックス現象を、数学的に等価なモデルへ置き換える手法を提案した。これにより、電池パック内での熱暴走の遷移と広がりを、既存手法の約500倍の速さで予測しながら、誤差を約5%に抑えられるという。設計段階で火災伝播リスクを素早く分析し、構造補強案を検討できるため、電池の安全性向上に役立つ。
オ・キヨン(Oh Ki-yong)教授は、この研究は既存の電池解析モデルの技術的限界を克服し、実際の産業分野ですぐに活用できる高精度かつ高速なシミュレーションフレームワークを示した点で価値が高いと述べている。さらに、この解析能力が韓国の電池安全技術分野での世界的リーダーシップの確立に寄与することへの期待を示した。
研究は、韓国科学技術情報通信部が支援する韓国研究財団の事業と、国立消防庁の電動モビリティ施設・部品向け火災対応技術開発事業の支援を受けて進められた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部