韓国の基礎科学研究院(IBS)は4月14日、IBSの研究者らが室温でも明るく発光する高効率な量子光源を実現したと発表した。研究成果は学術誌Science Advancesに掲載された。
IBS多次元炭素材料研究センターのパク・ギョンドク(PARK Kyoung-Duck)教授およびスー・ヨン・ダグ(SUH Yung Doug)副センター長らの研究チームは、2次元半導体において発光を担うエキシトンが室温で拡散しやすく、余剰電荷との相互作用によりエネルギーが光ではなく熱として失われるため、発光効率が1%未満にとどまるという課題に着目した。
本研究では、この課題に対し「空間的閉じ込め」と「電荷中和」の2つの手法を組み合わせた。単層の二硫化モリブデン(MoS2)の下に直径500nmのナノホール構造を形成し、エキシトンを中心に集束させて局在化させた。シミュレーションではナノホール領域内の約98%のエキシトンが中心に集まり、効率的に閉じ込められることが示された。
さらに、MoS2を金基板に転写する際に界面に形成される水層が電荷移動を妨げ、余剰電子が発光を阻害する点に着目し、熱アニール処理でこれを除去した。電子が基板へ移動して電荷が中和され、非放射損失経路が大幅に抑制された。その結果、ナノホール領域のフォトルミネッセンス量子収率は0.076%から約10%へと増加し、アニール前に比べ約130倍に向上した。
また、原子間力顕微鏡によりギガパスカル級の圧力を加えてナノホール周辺のひずみを制御することで、局在化エキシトンの発光強度を約120%増加させることにも成功し、この効果は可逆的であることが確認された。
スー同副センター長は「2次元半導体における光の生成と損失を精密に制御することで性能を大幅に向上させた点が重要です。この成果は量子ドットに匹敵する明るさと安定性に近づく可能性を示すものです。この技術は室温での単一光子光源の実現に向けた重要な転換点となり得ます」と述べた。

熱アニールによる電荷中和を通じて局在化エキシトンの高効率発光を実現するメカニズム
(出典:韓国IBS)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部