韓国科学技術院(KAIST)は5月6日、同院の研究者らが、従来のシリコン半導体プロセスだけを用いて、次世代の専用最適化ハードウエアである振動型イジングマシンを実装したと発表した。研究成果は学術誌Science Advancesに掲載された。

チェ・ヤンキュ(Yang-Kyu Choi)教授(左)、ユン・ソンユン(Seong-Yun Yun)氏(右)、キム・サンヒョン(Sanghyeon Kim)教授(上段左)とキム・ジュンピョ(Joon Pyo Kim)博士(上段右)
組み合わせ最適化問題は、多数の選択肢から最も効率的な解を探す問題で、通常の計算では数千年を要する場合もある。研究チームは、電気信号を周期的に繰り返す振動子に着目した。複数の振動子が信号を交換してリズムを同期させると、システムは自然に最も安定した状態へ向かい、その過程で最適解を見いだす。
従来の振動型イジングマシンは、振動子間のわずかな周波数差を精密に制御することが難しく、素子間の接続性にも限界があった。KAIST電気工学部のチェ・ヤンキュ(Yang-Kyu Choi)教授とキム・サンヒョン(Sanghyeon Kim)教授が率いる共同研究チームは、振動子と結合器の双方を、半導体の基本的なスイッチング素子である単一のシリコントランジスタで構成する手法を導入した。これにより、振動子間の周波数のばらつきを抑えて安定した同期を可能にし、結合器によって多段階の結合を実装することで、問題の重みをより精密に反映できるようにした。

An aging machine using a silicon oscillator and coupler
この技術により、複雑な最適化問題の表現能力と解探索性能が大幅に向上した。研究チームは、ネットワークを2つのグループに分け、グループ間の接続数を最大化する代表的な組み合わせ最適化問題「最大カット問題」の解決に成功した。物流ルート最適化、金融ポートフォリオ構築、半導体回路配置などへの応用が見込まれる。

(AI-generated image) Concept diagram of an AI-based silicon aging machine
(出典:いずれもKAIST)
この手法は、現在の半導体産業で用いられている相補型金属酸化物半導体(CMOS)プロセスを使用し、特殊材料や非標準プロセスを必要としない。このため、追加設備投資なしに既存の半導体生産ラインで量産・商業化に適している。チェ教授は、半導体設計自動化、通信ネットワーク最適化、資源配分など、大規模な組み合わせ最適化を必要とする産業分野への応用が期待されると述べた。また、微細化が物理的限界に近づく中で、トランジスタの新機能として「振動子」を実証した点に本研究の意義があるとしている。本研究は、KAIST博士課程のユン・ソンユン(Seong-Yun Yun)氏とキム・ジュンピョ(Joon Pyo Kim)博士が共同筆頭著者として主導した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部