韓国の高麗大学校(KU)は6月4日、同大学の研究チームが、電力効率向上と電流漏れのジレンマ解決に向け、既存の半導体製造プロセスを用いて、次世代AI半導体とニューロモルフィック・ハードウェアに適した高性能デバイスを開発したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Functional Materialsに掲載された。
同校の電気工学部のシン・チャンファン(Changhwan Shin)教授が率いる研究チームは、人間の脳の神経細胞やシナプス構造を模倣し、低エネルギーで複雑な計算を行うニューロモルフィック技術に着目した。従来のハフニウムジルコニウム酸化物(HZO)ベースの半導体デバイスには、電力効率を高めると電流漏れが生じるという性能上のジレンマがあった。
研究チームは、HZO層と電極の間にインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)の中間層を導入し、HZOベースで電荷蓄積機能を持つ強誘電体トンネル接合(FCTJ)デバイスを開発した。その結果、データを明確に読み取れるかを示すオン/オフ電流比と、電流を一方向に流して漏れを抑える整流比が、ともに10⁴を超えた。また、時間に応じて応答が変化する柔軟な学習能力も実現した。
FCTJデバイスの優れた電気的特性は、大規模集積化で発生し得るスニークパス問題の緩和にも有効であることが示された。行と列がそれぞれ2000を超える、選択用トランジスタを持たないクロスバーアレイでも、データを誤りなく読み取る能力を示す読み出しマージンを10%超確保できることを確認した。HZO/IGZOベースの材料とデバイス構造は、標準的な相補型金属酸化膜半導体(CMOS)プロセスと互換性があり、将来の大規模集積ニューロモルフィック・ハードウェアの基盤技術として利用できる。
電気的・構造的解析と温度依存的な伝導特性の評価から、IGZOがHZOと接する界面に形成される微細な酸素空孔が、時間の経過とともに蓄積する電子と相互作用することも分かった。これにより、電子が移動する際のエネルギー障壁が効果的に低下し、電流の流れが大幅に改善された。同デバイスは、単に情報を保存するだけでなく、刺激の頻度や強さに応じて情報を短期または長期に記憶するシナプス可塑性も示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部