韓国科学技術院(KAIST)は6月14日、同院の研究者らが、次世代半導体素子の開発で重要課題となるトランジスタの微細化限界をコンピューターシミュレーションで解析・予測する計算設計技術を開発したと発表した。研究成果は学術誌npj Computational Materialsに掲載された。

キム・ヨンフン(Yong-Hoon Kim)教授(左上)と研究チームメンバー
世界の半導体産業は2nmプロセス時代に入りつつあるが、半導体チップの中核部品であるトランジスタの実際の大きさはなお10nmを上回る。トランジスタは電流をオン・オフする超小型スイッチで、チップの性能と電力効率を左右する。微細化は高性能化と低消費電力化に不可欠だが、過度に小さくなると電子がエネルギー障壁を通り抜ける量子トンネル効果が起こり、電流制御が難しくなる。

研究画像
(AI生成)
研究チームを率いたのは、KAIST電気工学部のキム・ヨンフン(Yong-Hoon Kim)教授で、筆頭著者としてキム・テヒョン(Tae Hyung Kim)博士が参加した。研究チームは、実験データに依存せず基本的な物理法則に基づいて材料特性を計算する第一原理計算を活用した。さらに、金属電極と半導体の界面で生じる量子現象を精密に解析する、密度汎関数理論を拡張した計算手法MS-DFTを基盤に、接触抵抗などを評価する標準的手法である伝送長法(TLM)を用いたシミュレーションを行った。
研究チームはこの技術を、原子1層の厚さまで薄くでき、次世代トランジスタのチャネル材料候補とされる2次元半導体の単層MoS2(二硫化モリブデン)素子に適用した。その結果、金属電極の種類や接触部の原子配置によって、電子がチャネルにどれほど深く入り込み、電流制御をどの程度妨げるかを定量的に分析できた。微細化限界は、金属と接触構造の選択によって変わることを示している。

第一原理計算に基づく伝送長法(TLM)を用いた、2次元半導体の接触抵抗と電子の侵入限界長の解析
(出典:いずれもKAIST)
研究結果によると、電子がチャネルに侵入してトランジスタ動作に影響を及ぼし始める最大長である臨界トンネル長は、固定値ではなく、金属の仕事関数や界面の接触構造で変わる設計変数だった。検討した金属種と接触構造の候補では、電子漏れが止まる長さを4nm未満まで短縮できることも確認した。同教授は「本研究は、次世代トランジスタをどこまで小さくできるかを定義する新たな物理的基準を提示した点に意義があります」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部