2026年07月
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AIが自閉症モデルマウスの社会行動異常を自力で発見 韓国KAIST

韓国科学技術院(KAIST)は7月1日、同院の研究者らが動物の行動を言語のように読み取り、解釈する人工知能(AI)モデル「BehaVERT」を開発したと発表した。研究成果は学術誌International Journal of Computer Visionに掲載された。

キム・デス(Dae-Soo Kim)教授

KAIST脳認知科学科のキム・デス(Dae-Soo Kim)教授が率いる研究チームは、マウスの骨格の動きを自然言語の「単語」に相当するトークンに変換し、自然言語処理モデルBERTを基盤とするトランスフォーマー構造に学習させた。BehaVERTは、事前の生物学的知識を与えられなくても、自閉症モデルマウスの中核的な社会行動の異常を特定した。

BehaVERTの解析パイプラインの概要 この図は、BehaVERTが動画から動物行動を解析する流れを示している。まず、ウェブベースのツールを用いて骨格の特徴点と行動にラベルを付ける。次に、各動画フレームの骨格座標を768次元の「トークン」に変換し、自然言語処理モデルBERTを基盤とするトランスフォーマー構造に入力する。このモデルは、各フレームの行動と、全シーケンスの全体的な状態の両方を分類できる。最終層のトークンはさらに、教師なしクラスタリングと注意解析に用いられ、研究者は、モデルが判断時にどの行動に注目したかを時間軸に沿って可視化できる。

研究チームは、マウスの鼻、耳、脊椎、四肢、尾の位置を行動を表すトークンとして表現した。BehaVERTは行動を分類するだけでなく、言語モデルが単語列から意味を推測するように、時間の流れの中で行動の文脈上の意味を理解する。社会的相互作用、多個体行動、3次元運動解析、自閉症関連行動評価を対象とする5つの国際ベンチマークデータセットで、最先端の性能を達成した。

Shank3Bノックアウト自閉症モデルマウスと健常対照群を識別する実験では、AIは口と口の接触行動に一貫して注目した。これは、自閉症モデルマウスが正常な接近行動を維持しながらも、社会的相互作用に欠陥を示すという過去の行動神経科学研究と一致する。AIは、明示的な生物学的指示なしに、行動観察だけから重要な生物学的特徴を再発見したことになる。

動物行動における「構成的意味構造」の発見 モデルが学習した内部表現空間を主成分分析(PCA)で可視化したところ、異なる行動が「移動性」「垂直方向への注意」「社会的関与」といった解釈可能な軸に沿って幾何学的に整理されていた。行動間の関係は、単語埋め込みに見られる意味的関係とよく似た、一貫したベクトル変換として表された。特に、行動ラベルを一切用いず、マスク化した特徴点のモデル化による自己教師あり学習だけでモデルを訓練した場合にも、同じ構成的構造が現れた。このことは、動物の動き自体が言語のような意味構造を含むことを示唆している。

研究チームは、手作業による注釈なしに行動データから直接学習する自己教師あり学習も採用した。さらに、ラットの行動で学習したモデルをマウスの行動解析に転用できることを示し、種を超えて使える行動基盤モデルの可能性を示した。同教授は「BehaVERTは行動分類を超え、行動の意味を解釈することを可能にします。創薬、精神疾患、行動遺伝学などで新たな知見を発見する重要な研究ツールになると期待しています」と語った。

AIが自閉症モデルマウスの主要な社会行動の欠陥を独自に発見 Shank3B遺伝子を欠失した自閉症モデルマウスと正常マウスをモデルがどのように識別したかを解析したところ、注意解析により明確なパターンが示された。モデルはまず、2匹のマウスが物理的に接近している時間帯を特定し、次に、2匹が口を接触させる「口と口の接触」というまれな相互的社会行動に特に注目した。この発見は、自閉症モデルマウスが相互的な社会的相互作用に欠陥を示すという、確立された行動神経科学の知見と一致する。重要な点として、AIは事前の生物学的知識なしに、行動データだけを用いて、この中核的な行動表現型を再発見した。
(出典:いずれもKAIST)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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