2026年07月
トップ  > 韓国科学技術ニュース> 2026年07月

リボソーム活用で高機能RNA人工遺伝子回路を開発 韓国POSTECH

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は7月6日、生命科学科の研究チームが、リボソームを遺伝子発現のスイッチとして利用し、細胞内の複数のRNAや代謝物の信号を統合して論理演算し、条件に応じて応答するRNAベースの人工遺伝子回路「RATEX」を開発したと発表した。研究成果は学術誌Angewandte Chemieに掲載された。

(出典:POSTECH)

RATEXは、リボソーム支援転写発現制御装置(Ribosome-Assisted Transcriptional EXpression controller)の略である。開発したのは同学科のキム・ジョンミン(Jongmin Kim)教授、カン・ハンソル(Hansol Kang)博士、大学院生のコ・ヒョンソプ(Hyunseop Goh)氏とキム・チェリ(Chaeri Kim)氏。従来のRNAベースの人工遺伝子回路は、DNAの情報をRNAに写す「転写」か、RNAからタンパク質を作る「翻訳」の一方で信号を処理するものが中心で、複数の制御段階にまたがる情報処理には限界があった。

研究チームは、RNA転写産物に組み込まれた分子的特徴にリボソームが応答する性質に着目した。特定のRNAモチーフと組み合わせ、条件が満たされた際にリボソームを遺伝子上の所定位置で一時停止させ、その結果に応じて転写を進めるかどうかを決める「翻訳―転写変換器(TTC)」を構築した。TTCはRATEXの基本要素で、翻訳段階の演算結果を転写制御へつなぎ、既存の人工翻訳論理スイッチを転写制御に転用できる。

実験では、最大1492倍の遺伝子制御能力を示し、最大6種類のRNA信号を同時に処理する論理回路を実装した。さらに、RNA信号とアミノ酸やビタミンなどの代謝物を同時に認識するハイブリッド論理回路も構築した。CRISPRによる遺伝子制御や人工的な膜を持たない細胞小器官と組み合わせ、指定した全条件が満たされた場合にのみ、細胞の形態や細胞内構造を変えられることも示した。

RATEXは、がん特有の分子信号を検出してその場で治療物質を作るスマート治療や、特定の汚染物質の組み合わせだけに反応する環境バイオセンサーへの応用が期待される。同教授は「RNAや代謝物など異なる種類の信号を1本のRNA転写産物内で統合・処理できることは、合成生物学回路をさらに大規模化する新たな設計指針になります」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

  • アジア・太平洋総合研究センター
  • Science Japan
  • 客観日本
上へ戻る