2026年08月
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磁性探針との交換相互作用を利用し単一分子の量子状態を電気制御 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)は7月16日、IBS量子ナノサイエンスセンター(QNS)とカールスルーエ工科大学(KIT)の研究者らが、磁性を持つ単一分子と走査型トンネル顕微鏡(STM)の磁性探針との交換相互作用を利用し、分子の量子状態を電気的に制御できることを実証したと発表した。研究成果は学術誌Nature Physicsに掲載された。

電圧依存性交換場を用いた単一分子量子状態制御の模式図
(出典:IBS)

量子技術では、量子情報の基本単位となる量子ビットを原子スケールで個別に制御する必要があるが、従来用いる磁場の作用を単一分子に限定することは難しい。数nmの磁性を持つ分子は、規則正しい構造に自己組織化し、望ましい量子特性を持つよう化学的に調整できるため、量子コンピューティングや量子センシング、スピントロニクスの構成要素として期待されている。これまでの研究で、電場によって分子のスピンを調整できることは示されていたが、その効果は一般に、実用的な量子操作に用いるには不十分だった。

QNSのアンドレアス・ハインリッヒ(Andreas Heinrich)所長が率いる研究チームと、QNSに在籍したフィリップ・ウィルケ(Philip Willke)氏が率いるKITチームは、STMと電子スピン共鳴を組み合わせた手法(ESR-STM)で、鉄フタロシアニン(FePc)分子などを調べた。印加電圧が分子の電子エネルギー準位の一つに近づくと、分子とSTMの磁性探針との交換相互作用を通じて、分子のスピンが顕著な非線形応答を示した。共鳴周波数は30%近く変化し、従来報告された分子のスピンの電気的調整効果の大半より1桁大きかった。また、電圧制御された交換相互作用が、スピン制御用の極めて局所的な実効磁場を生成するというQNSの理論的枠組みを実験的に裏付けた。

ラビ振動の測定により、磁場を変えず、電圧によって単一分子のスピンを選択的かつコヒーレントに制御できることを示した。結合した複数の分子のスピンでも、隣接スピンを乱さず一方だけを調整できた。この効果は分子の変形に依存せず、分子のスピンと近接する磁性電極との相互作用から生じるため、量子ドットや固体中のスピン欠陥にも応用の可能性がある。責任著者のクリストフ・ヴォルフ(Christoph Wolf)氏は「個々の分子のスピンを、これまでにない効率とナノスケールの精度で操作できる、根本的に新しい機構を実証しました」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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