韓国科学技術院(KAIST)は8月11日、同院の研究者らが金属有機構造体(MOF)の細孔を鋳型として、ガス分子を結晶のように規則正しく並べた「ガス格子」を形成し、目的のガス配列を安定化できる細孔材料候補の計算設計手法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

キム・ジハン(Jihan Kim)教授(左)と研究チームメンバー
KAIST化学・生体分子工学科のキム・ジハン(Jihan Kim)教授の研究チームは、MOFの大規模スクリーニングと機械学習による逆設計を組み合わせた計算フレームワークを開発した。MOFは、金属イオンまたはクラスターを有機リンカーでつなぎ、無数の微細な細孔を形成した材料である。従来、細孔内の吸着ガスは無秩序に分布すると考えられていたが、同手法ではガス分子間の相関と細孔内での整合的な充填も設計変数に含めた。
単原子の希ガスであるキセノン(Xe)をモデルに調べ、規則的な配列を安定化するコバルト系MOF「Co-CAU-36」を特定した。グランドカノニカル・モンテカルロ(GCMC)シミュレーションでは、Xeが無秩序に広がらず、体心立方(BCC)型の格子に並ぶことを確認した。通常のバルク状態で必要となる極端な高圧を加えず、細孔構造を鋳型としてガス分子を結晶状に配列できた。また、産業上重要なXeとクリプトン(Kr)の混合物では、Xeが秩序化した殻状領域を優先的に占め、Krを細孔中心部へ押し出す、これまで未報告の分離挙動が現れた。

ホスト主体の吸着設計から、構造体を鋳型とするガス格子設計への概念的転換。従来のMOF設計では、吸着相を無秩序なものとして扱い、吸着量や選択性などの平均化された指標で評価する一方、金属ノードと有機リンカーを調整することで、ホスト・ゲスト相互作用を最適化する。これに対し、ガス格子設計では、ゲスト分子間の相関と細孔構造に整合した分子充填を設計変数に含める。これにより、結晶状で構造が明確に規定された吸着相を形成し、吸着応答をより柔軟に調整できる。
(出典:いずれもKAIST)
研究チームは機械学習と遺伝的アルゴリズムによる逆設計で、BCC型と面心立方(FCC)型の格子を狙った候補構造も特定した。博士課程のキム・ヨンフン(Younghun Kim)氏とキム・ドフン(Dohoon Kim)氏が共同筆頭著者、修士課程のキム・スンウ(Seungwoo Kim)氏とイム・ユンソン(Yunsung Lim)博士が共著者を務めた。
同教授は「本研究は、細孔材料内でガスが結晶のような秩序状態を形成することを初めて実証しました。吸着容量の増大を主眼とした従来の方法から進み、ガス分子の配列自体を設計対象とした点に意義があります。二酸化炭素や水など、より複雑な分子にも拡張できれば、ガス分離・貯蔵用材料を設計する重要な出発点になり得ます」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部