2026年09月
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ウイルス由来RNAで直鎖状mRNAを環状RNA並みに安定化 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)は8月14日、IBSのRNA研究センターの研究者らが、メッセンジャーRNA(mRNA)を安定化してタンパク質発現量を増やすウイルス由来RNAエレメントを発見したと発表した。研究成果は学術誌Cellに掲載された。

mRNAは、細胞がタンパク質を合成するために用いる遺伝情報を運ぶが、細胞内で急速に分解される。安定性を左右するのが、分子末端にあるアデニンの連続配列「ポリ(A)テール」で、短くなると分解されやすい。今回の成果は、高効率で持続性の高いmRNA技術につながる可能性がある。

研究チームは、脊椎動物に感染する337種のウイルスのゲノムを約20万個の短い断片に分け、各断片がmRNA量、翻訳効率、タンパク質発現量に与える影響を調べた。その結果、遺伝子発現を高めるウイルスRNA断片を数百個発見した。うち23個は細胞内酵素ターミナルヌクレオチジルトランスフェラーゼ4(TENT4)に依存し、19のウイルス属に分布していた。チームはこれらを配列や構造などに基づいて6タイプに分類した。TENT4は「混合テーリング」によってポリ(A)テールを伸ばし、RNAの分解を遅らせる。研究チームはポリ(A)テールの伸長を促すウイルスRNAエレメントを「テイロン(Tailon)」と名付けた。

また、TENT4に依存しない強力なエレメントPt1も発見した。Pt1はポリ(A)ポリメラーゼ・ガンマ(PAPγ)と同アルファ(PAPα)を細胞質で直接呼び寄せ、転写後にポリ(A)テールを伸ばす。培養細胞では、従来の直鎖状mRNAの半減期が約7.6時間だったのに対し、Pt1を含む直鎖状mRNAは23.1時間で、環状RNAの24.9時間に匹敵した。先行研究では、Pt1やA7を含む直鎖状mRNAは環状RNAと同程度の安定性を示し、環状RNAの約9倍のタンパク質を発現した。マウスでは、Tailonを含む直鎖状mRNAによるタンパク質発現シグナルが最長2週間持続したが、従来の直鎖状mRNAと環状RNAでは1~3日以内に消失した。

研究を率いたV・ナリー キム(V. Narry Kim)所長は「ウイルスがRNAを守るため、非常に効率的で多様な方法を進化させてきたことを示しました。これらの生存戦略を体系的に特定することで、より高性能で効果が長く持続するmRNA技術を開発する基盤を築きました」と述べた。

図1. 研究チームは、脊椎動物に感染するウイルスのゲノムを鎖長約200ヌクレオチドの断片に分割し、約20万個のRNA断片を作製した。各断片を組み込んだmRNA発現コンストラクトを細胞に導入し、mRNAの安定性とタンパク質合成効率を測定した。

図2. (上)Tailonの作用機構。mRNA内のTailon配列がTENT4またはPAPタンパク質と結合する。これらの酵素がポリ(A)テールを伸長し、mRNAの安定化を助ける。(左下)細胞内に残存するRNA量を経時的に測定した。対照の直鎖状mRNAは急速に分解されたが、Tailonを含む直鎖状mRNAは環状RNAと同程度の量が維持された。(右下)直鎖状mRNAと環状RNAによるタンパク質の総発現量を測定した。Tailonを含む直鎖状mRNAでは、タンパク質発現量が従来の直鎖状mRNAの5倍、環状RNAの約9倍となった。

図3. Tailonを含む直鎖状mRNAと対照RNA(Tailonを含まない直鎖状mRNAまたは環状RNA)をそれぞれマウスに投与し、タンパク質発現を追跡した。Tailonを含む直鎖状mRNAによる強いタンパク質発現シグナルは投与2週間後にも残っていたが、対照RNAのシグナルは投与1日後には既にほとんど検出できなかった。
(出典:いずれもIBS)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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