韓国科学技術院(KAIST)は8月19日、同院の研究者らが亜鉛イオンとプロトンを順次貯蔵する、二次元構造を持つ導電性の金属有機構造体(MOF)電極を開発したと発表した。研究成果は学術誌Chemに掲載された。

研究チームメンバー(左から):KAISTのサラ・S・パク(Sarah S. Park)教授、POSTECH博士課程のパク・グンチャン(Geunchan Park)氏、POSTECH修士課程のイ・ギュウォン(Gyuwon Lee)氏、POSTECHのキム・カンミン氏
水系亜鉛イオン電池は火災リスクやコスト、環境負荷が比較的低く、大規模エネルギー貯蔵システム(ESS)向けとして注目される。一方、二価の亜鉛イオンは電極内での移動が遅く、高容量と高速充放電の両立が難しい。極めて小さく高速で移動するプロトンは理想的な電荷担体だが、過剰に入ると電極表面に副生成物が形成され、亜鉛イオンの移動を妨げる。このため、従来は電池性能を低下させる「厄介者」と見なされ、その反応を抑えることに研究の重点が置かれてきた。

二次元導電性金属有機構造体(MOF)内で亜鉛イオンとプロトンを順次貯蔵することにより、高容量のエネルギー貯蔵を実現する仕組みを示した概念図
研究チームはプロトン反応を抑制せず、両イオンの貯蔵順序を精密に制御した。二次元導電性MOFの微細孔にアミン官能基を導入し、特定の電圧でのみプロトンを貯蔵するよう設計した結果、高電圧域で比較的大きな亜鉛イオンを先に貯蔵し、電圧低下に伴って小さなプロトンを追加できた。開発したCu3(HHTATP)2電極では、両イオンが異なる電圧域で順次エネルギー貯蔵に関与し、二つの貯蔵過程の干渉が低減された。
同電極は0.5A g−1で368.7mAh g−1の貯蔵容量を達成した。充放電速度を16倍にしても初期貯蔵容量の46.9%を維持し、500回を超える急速充放電サイクル後も安定した性能を示した。各種X線分析により、亜鉛イオン、プロトンの順に貯蔵され、プロトンの貯蔵と放出を繰り返せることも確認した。

本研究の概念図(AI生成画像)
(出典:いずれもKAIST)
研究チームを率いたKAIST化学科のサラ・S・パク(Sarah S. Park)教授は「この原理をさまざまな電極材料に応用することで、より多くのエネルギーを迅速に貯蔵できる電池の開発につながると期待しています」と述べた。浦項工科大学校(POSTECH)博士課程のパク・グンチャン(Geunchan Park)氏と修士課程のイ・ギュウォン(Gyuwon Lee)氏が共同筆頭著者を務め、キム・カンミン(Kangmin Kim)氏が第2著者となった。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部