2026年09月
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内部状態を判断の文脈に用いる自律・適応型AIの枠組みを提案 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)は9月2日、IBSと成均館大学校、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者らが、生物が内部状態を監視・調節する仕組みに着想を得て、変化する環境で人工知能(AI)の学習と行動を導く「内受容感覚AI」の枠組みを提案したと発表した。研究成果は学術誌Nature Machine Intelligenceに掲載された。

IBS神経科学イメージング研究センター副センター長で成均館大学校にも所属するウ・チュンワン(WOO Choong-Wan)氏、成均館大学校のホン・ソクジュン(HONG Seok Jun)教授、UCLのカール・J・フリストン(Karl J. FRISTON)教授らは、AIエージェントに明示的な内部状態を与え、学習と意思決定の文脈として用いる方法を数学的に定式化した。内部状態を単なる監視対象や報酬計算用の変数ではなく、周囲の解釈、結果の評価、次の行動の決定に使う情報とする。外部の手掛かりは消失したり意味が変わったりするが、内部状態は継続して利用できる。また、普段は重要でない資源も、必須変数が危険な限界に近づけば価値が高まる。

研究チームは、この考えを検証するため、AIエージェントの生存行動と環境への適応能力を評価する3次元仮想テスト環境「EVAAA」を開発した。エージェントは、資源、障害物、捕食者、気温変化、昼夜周期がある環境で、満腹度、水分状態、体温、損傷の4変数を生存可能な範囲に保つ。内部の必要性に応じて競合する資源を選ぶ課題や、資源獲得の利益と身体損傷の危険を比較する課題により、外部状況が変わっても内部状態を安定した基準として使えるかを調べる。

ロボットへの応用では、バッテリー残量、モーター温度、摩耗、損傷を所定の反応のきっかけにするだけでなく、学習と意思決定に反映できる。例えば、損傷部品への負荷を減らし、過去に衝突した経路を避けることを学習できる。一方、研究者らは、この枠組みは生物の内受容感覚を単純化した計算論的抽象化であり、意識や主観的経験の証拠ではないと強調した。筆頭著者のイ・ソンウ(LEE Sungwoo)学生研究員は「内部状態を単なる監視信号ではなく、判断の文脈として扱ったことが本研究の要点です」と述べた。

図1 生物とAIエージェントにおける内受容感覚
生物は、体温などの内部状態に基づいて優先順位を定めながら、未知の状況に適応して行動できる。脳内では、内部状態が報酬処理に寄与し、感覚情報の解釈に影響を与える。従来の強化学習は通常、外部から定義された報酬に依存するが、内受容感覚AIは内部環境を導入し、その状態を学習と行動の指針として利用できる。

図2 内受容感覚AIのための3次元仮想生存環境
エージェントは、満腹度、水分状態、体温、損傷という4つの内部変数を監視しながら、視覚、嗅覚、温度感知、衝突を通じて外部環境の情報を受け取る。訓練は、資源、障害物、捕食者が順次導入される、複雑さを増す4段階で進められる。エージェントには、内部変数を生存可能な範囲内に維持することで報酬が与えられる。訓練時には遭遇しなかった条件を別の試験環境で提示し、未知の状況にどの程度適応できるかを評価する。
(出典:いずれもIBS)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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