韓国科学技術院(KAIST)は9月14日、同院の研究者らがRNAの化学修飾N6-メチルアデノシン(m6A)を手掛かりに、特定のRNAを神経細胞の軸索の末端側へ運ぶ仕組みを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

左から、韓国科学技術院(KAIST)生命科学科の学生、ク・ボンサン(Bonsang Koo)氏、ファン・ヒソン(Huiseon Hwang)氏、パク・ミニョン(Minyeong Park)氏、ユン・ギジュン(Ki-Jun Yoon)教授
神経細胞では、細胞体で作られたRNAが遠く離れた軸索の成長中の先端でも必要になる。多数のRNAから必要なものを選び、適切な場所に運ぶ仕組みは十分に分かっていなかった。KAIST生命科学科のユン・ギジュン(Ki-Jun Yoon)教授らは、RNAを構成するアデノシンに加わるm6A修飾が、特定のRNAを運ぶ「配送タグ」として働くことを突き止めた。
研究チームは、RNAにm6Aを付加する酵素複合体の構成要素METTL14を、発達中の神経細胞から欠失させたマウスを調べた。通常のm6A修飾がない神経細胞では、軸索の伸長と神経突起の発達が妨げられた。さらに、高解像度の解析法m6A-SAC-seqを用い、発達中のマウスの脳のRNA上でm6Aが付加される位置を一塩基単位で特定した。その結果、軸索の発達やシナプスの組織化に関わるRNAにもm6Aが付いていることが分かった。
m6Aが付いたRNAを認識するタンパク質YTHDF2は、RNA結合タンパク質FMRP、モータータンパク質KIF5Cと協働し、神経突起に沿ったRNAの輸送を促す。YTHDF2は主に不要なRNAの分解を促す働きで知られていたが、発達中の神経細胞では特定のRNAを遠くへ運ぶ役割も担うことが分かった。

図1 m6AとYTHDF2がRNAの神経突起への局在を調節する仕組みを示すモデル。YTHDF2はm6Aで修飾されたRNAを認識し、神経突起への局在または分解へと導く。一方、m6Aが減少すると、一部のRNAは安定化するものの、神経突起への局在は妨げられる。
(出典:いずれもKAIST)
研究チームは、RNAが正常に作られても必要な場所に届かないことが、神経発達障害や神経変性疾患に関わるかを今後調べることができるとしている。関連が確認されれば、RNAの輸送を調節する治療法の開発につながる可能性がある。KAIST生命科学科のク・ボンサン(Bonsang Koo)氏、アジート・クマール(Ajeet Kumar)博士、ファン・ヒソン(Huiseon Hwang)氏が共同筆頭著者を務めた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部