2026年10月
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AIとロボットで135年前の化学反応から未知の経路を発見 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)は9月15日、IBS内のアルゴリズム・ロボット合成センター(Center for Algorithmic and Robotized Synthesis)の研究者らが、1891年に報告されたビギネリ反応の960通りの条件をロボットで調べ、従来知られていなかった経路から複雑な二環式分子が生じることを発見したと発表した。研究成果は学術誌Nature Synthesisに掲載された。

化学反応では、同じ出発物質でも濃度や温度、触媒などの条件によって異なる経路をたどり得る。従来の自動化学実験は、既知の生成物の収率を高める条件探しに使われることが多い。今回は特定の生成物を目標とせず、条件の組み合わせからなる「反応ハイパースペース」で生じる生成物と経路を探索した。

研究を率いた同センター長のバルトス・A・グリボウスキー(Bartosz A. Grzybowski)教授らは、通常の生成物とは異なる複雑な二環式構造が生じる未知の分岐経路を発見した。化学分野の人工知能(AI)を活用した反応機構の解析から、出発成分の7分子が最終的に一つの生成物の形成に寄与する「擬7成分反応」に相当すると分かった。さらに、明らかにした反応ネットワークを手掛かりに合成法を組み直し、一部の天然物に迫るほど複雑な構造を持つものを含め、関連する分子群を得た。

得られた化合物の一部は、濃度や温度に応じて自発的に集合した。別の化合物はバリウムや亜鉛のイオンを選択的に結合し、特定の金属を検出する用途への可能性を示した。ある化合物は、金属イオンがない場合、固体か溶液中かによって、同じキラリティーの分子同士か、反対のキラリティーの分子同士かで、集合する傾向が異なった。亜鉛イオンがあると同じキラリティーの分子同士、バリウムイオンがあると互いに鏡像関係にある分子同士が優先的に集合した。このように金属イオンで制御できるキラル自己選別は極めて珍しく、鏡像異性体の選択的検出や分子認識などに役立つ可能性がある。

研究チームは、ロボット実験と大規模な反応経路の探索、化学AIを組み合わせることで、長年研究されてきた反応からも未知の経路と予想外の機能を持つ分子を見いだせると指摘している。

図1. 研究の着想を示す概略図
ロボット実験システムを用いて反応ハイパースペースを体系的に探索した結果、単純な出発物質から予想外の反応性と複雑な二環式生成物が見つかった。このロボット実験の結果を手掛かりに、新たな分子骨格の合成が着想された。

図2. 反応ハイパースペースにおける生成物の収率分布
各立方体は、触媒であるカンファースルホン酸の濃度を一定にしたときの4次元空間の「断面」を表す。色の濃淡は生成物の収率を定量的に示す。

図3. 単離された化合物に基づいて再構築したビギネリ反応ネットワーク(R=p-メトキシフェニル基)
緑の矢印で示した化合物8aに至る経路は、反応機構を扱う化学AIの助けを借りて提案された。
(出典:いずれもIBS)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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