「犬が人間と一緒に最高の生活を送るための科学」というのは、子供が作った空想の仕事のように聞こえる。しかし、動物福祉科学という分野は現実に存在しており、影響力がある。
犬は人間に最も馴染みのあるコンパニオンアニマルであり、同士でもある。犬は科学的注目に値する。近年、犬と人間の類似性だけでなく、犬独特の特徴についても、多くのことが分かってきた。
人々は、犬がどのように人間の役に立ってくれているのかと考えることが多い。犬は仲間として、探知犬として、そして人間の安全と健康を守ってくれる。犬に焦点を当てた科学は、世界を4本足の視点から考え、この新しい知識を適用して犬が幸せな生活を送れるようにするのに役立つ。
本記事は、生活の中で犬が幸せに尻尾を振るための5つのヒントを紹介する。
犬は匂いを嗅ぐと幸せになる。人間は視覚に頼っているため、犬が匂いを頼りに生きていることを忘れがちである。犬を散歩に連れて行くことは、人間の日常的な運動であることが多いが、犬にとっては屋外で過ごす唯一の時間かもしれない。そのことを忘れてはいけない。
犬は、木や電信柱の匂いを納得いくまで嗅ぐと、満足のいく情報で満たされる。それは、人間が山の頂上に立って、豊かな色に染まる夕景を楽しむのと同じことなのだ。
犬は匂いの世界で生きているのだから、心ゆくまで匂いを嗅がせてあげることが大切
(Pawtraits/Shutterstock)
現在、動物福祉科学では主体性が注目を集めている。コロナ禍初期の厳しいロックダウンを経験しストレスを受けた人ならば、行きたい場所に行けなかったり、会いたい人に会いたいときに会えなかったりしたことが、いかに精神的健康に影響したかは、容易に思い出すことができるだろう。
現在、動物に選択肢とコントロールを与えることが、動物の精神的健康にとっても重要であることが分かっている。犬に多くの選択肢を与え、主体性を行使する権限を与えれば、犬はよい福祉を享受できる。
これは、犬が好きなときに外に出たり中に入ったりできるように、犬用ドアを設置することが該当するかもしれないし、近所の公園でどの匂いのする道を犬に選ばせることかもしれない。周りに転がっている様々なおもちゃの中から、その日に遊ぶものを3つ選ぶようなものだろう。あるいは 床に日が射していることに初めて気がつき、犬がくつろげるように古い毛布を敷くことかもしれない。
選択肢は、複雑なものであったり高価なものであったりする必要はない。
一般的に、人々は特定の犬種に特定の性格を当てはめる。しかし、人間同様、犬にも独自の性格と好みがある。すべての犬が同じものを好むわけではなく、新しく飼う犬は前の犬とはまったく異なるかもしれない。
ドッグランに行って他の犬と一緒に1時間思い切り走り回るのが好きな犬がいるだろうし、庭で何かをかじりながら飼い主と一緒に過ごすことを好む犬もいるだろう。
同じ犬種であっても、犬の行動は犬種間の違いと同じくらい異なる。犬の福祉にとって重要なことは、個体としての犬の状況に応じて対応することである。
犬が個体として何をしたいかに気づくだけでなく、犬が楽しめないことを無理やりやらせないことも重要である。目をそらす、唇をなめる、あくびをするなど、犬が不快感示す行動に注意して欲しい。
人間と同じように、犬にも性格の違いがある
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たとえ家の中であっても、犬が人間と一緒に行いたくない活動があれば、すべてについて選択肢を提供することができる。犬が退避できる静かな場所を用意しておくことは、犬が活動したくない場合に逃げ場を持つことになり、非常に重要である。
テレビを観るときに音量を大きくすると、犬の敏感な耳には大音量すぎるかもしれない。犬が退避できるように、別の部屋へのドアを開けておくようにするのがよい。来客に委縮する犬もいる。来客と無理やり交流させるのではなく、犬が安全で静かな場所に行けるようにすると、犬は対応しやすくなる。
子どもに共感を教える際に、犬は素晴らしいロールモデルとなる。犬を近寄らせ、撫でさせ、好きな時に立ち去らせると、同意を教えることができる。サーカスでエキゾチックな動物の芸を見るのと同じ感覚で、娯楽のために犬に着せ替えをする時代は終わったようだ。もし犬に尋ねることができるならば、ほとんどの犬はコスチュームを着たり、ハロウィーンの冒険に参加したりしたくないと言うだろう。
犬がリードなしで走ると、空間の使い方が変わる。リードを付けて散歩しているときよりも、さらに広い範囲を探索し、さらに速く走る傾向を見せる。これは、犬にとって重要で楽しい運動となり、健康を維持するのに役立つ。
リードありとリードなしでは犬の歩き方が違う
最近、犬にとって住みやすい都市の調査が行われ、犬がリードなしで走れるように指定されたすべての場所が地図に示された。犬の密度は、居住地により異なるが、6人に1匹から30人に1匹までであることが分かった。
また、リードなしで走れる場所へのアクセスと、各行政区域の犬の年間登録料との関連について調べたところ、メルボルン大都市圏全体で大きく異なることが分かった。料金は37オーストラリアドルから84オーストラリアドルと大きな違いがあり、この違いはリードなしで走れる利用可能な場所の数とは無関係であることが分かった。
オーストラリアは愛犬家国家であり、友達である犬が最高の生活を送れるようにすると、国民は大きな幸せを感じる。4本足の視点から生まれた科学は、犬との日常的な関わりについて再考させ、人間と犬が共に健やかに暮らせるよう、前向きな変化をもたらすことができる。
(2024年11月12日公開)