【The Conversation】 一次エネルギーの計算が再生可能エネルギーを実際より少なく見せている

気候変動に関するニュースを追っている人は、「一次エネルギー」という言葉を目にしたことがあるだろう。

この言葉は、燃料や天然資源に含まれる生のエネルギーを意味する。つまり、樽の中の石油、パイプラインを流れるガス、あるいは太陽光パネルに当たる太陽光のエネルギー含有量のことである。

人類が消費しているエネルギー量を示すにあたり、一次エネルギーがよく使われる。その数字は途方もない。石炭、石油、ガスは数十億トンにもなる。グラフにすると、再生可能エネルギーや原子力といったゼロエミッションの選択肢はごくわずかで、膨大な量の化石燃料を転換するのはもはや不可能と思える。オーストラリアは依然として一次エネルギーの90%以上を化石燃料が占めている。

しかしこれは誤解を招く。その理由は、化石燃料に含まれる膨大なエネルギーのほとんどが無駄になっているからだ。世界が電化に進むにつれ、同じ結果を得るための一次エネルギー需要は大幅に減少するだろう。

オレンジからオレンジジュースへ

グラス一杯のオレンジジュースを作るには、まずはオレンジ丸ごと1個から始める。これが一次エネルギーである。しかし、皮をむき、絞り、濾した後、求められる部分、つまりジュースだけがグラスの中に入る。これは有用エネルギーと呼ばれる。

本当に大切なのは一次エネルギーではなく、有用エネルギーである。つまり一次エネルギーの中で、家電製品を動かしたり、建物を暖めたり、車を回したりする量である。

多くの場合、一次エネルギーと有用エネルギーは、大きく異なる。家、車、工場がエネルギーを得るためには、まずエネルギーを変換し、輸送し、配送しなければならない。その過程で、特に化石燃料では、驚くほど多くのエネルギーが失われる。

石炭火力発電所では、発電のために石炭を燃やし、蒸気を発生させ、タービンを回す。あらゆる段階でエネルギーが失われる。その結果、石炭に含まれるエネルギーのうち、電力に変換されるのはわずか35%から41%である。

化石燃料の燃焼は無駄がつきものであり、穴だらけのバケツで水を運ぶようなものである。最初はたくさん水を入れても、水をグラスに注ぐときにはほとんどの水が漏れてしまっている。

石炭はエネルギー密度が高いが、そのエネルギーの大部分は実際には利用されていない
(mikulas1/Getty)

一次エネルギーには計算上の問題がある

世界のエネルギー統計では、再生可能エネルギーは実際よりも少なく見える。これは、再生可能エネルギーの発電量が少ないからではなく、一次エネルギーの計算方法に問題があるためである。

一次エネルギーの測定では複雑な仮定と計算方法が使われるため、誤った結果につながることがある。

簡単な例を挙げてみよう。石炭、原子力、太陽光はいずれも同じ100キロワット時の電力を供給できるとする。しかし、国際エネルギー機関や欧州連合がまとめた統計では、石炭と原子力はそれぞれ「一次エネルギー」として303キロワット時と表示されているのに対し、太陽光として表示されているのは100キロワット時だけである。

これは、石炭と原子力の廃熱は計算に含まれているのに対し、太陽光や風力といった無料の燃料は計算に含まれていないためである。

その結果、統計上では、再生可能エネルギーは実際よりも相当に少なく見える。

効率性がすべて

エネルギー源を比較する場合、単純な数字だけでは全体像は見えてこない。石炭火力発電所、ガス火力発電所、原子力発電所、バイオマス発電所では、一次エネルギーの消費量は、燃料に含まれる潜在熱量と、発電所がその熱を電力に変換する効率性によって決まる。

石炭は、燃料の密度と転換率について測定すると実に優れている。しかし、石炭が採掘され、輸送され、精製され、燃焼され、発電・送電されるまでには、その潜在熱量の多くは廃熱として失われる。特に古い石炭火力発電所は効率性が悪い。

太陽光パネルは太陽光の約20%しか電力に変換できないため、表面的には他のエネルギー源よりも弱いように見える。一方、風力タービンは風力エネルギーの約40%を電力に変換できるため、石炭火力と同程度の力があるように見える。

しかし、太陽光と風力は直接電力を生み出す。燃料を供給する必要がないため、火力発電所や内燃機関のような膨大な変換損失を回避できる。

つまり、太陽光と風力の「効率性」の数値は低く見えるかもしれないが、これらのエネルギー源は、一次エネルギー1キロワット時につき、石炭よりも多くの利用可能エネルギーを届けることが多い。

オーストラリアでは、現在、経済性は完全に太陽光と風力が優勢となっている。補助金がなくても、太陽光や風力の方が石炭やガスよりも安価に新規発電所を建設できる。

電気化はエネルギーの漏れを防ぐ

さらに良いニュースがある。暖房、輸送、産業のあらゆる分野で、化石燃料を電気に切り替えるとエネルギー効率は大幅に向上し、同じ結果を得るために必要なエネルギー量は大幅に減少する。

ガソリン車の場合、実際の運動エネルギーに変換されるのは燃料に含まれるエネルギーのわずか16%から25%だけである。残りは、主にエンジンからの熱や車輪への動力伝達として無駄になる。

電気自動車ははるかに効率が高い。バッテリーと回生ブレーキで供給されるエネルギーの87%から91%を走行に利用する。

給湯ヒートポンプはガス給湯器よりもはるかに効率的である。電力を1キロワット時消費すると、ヒートポンプは3から5キロワット時相当の熱を供給する。つまり、効率性は300%から500%である。対照的に、ガスヒーターの効率性は30%から80%である。

暖房ならば、電気の方がガスよりもはるかに効率性がいい。現代のガスヒーターは、発生した熱の10%から40%を依然として無駄にしている。逆循環式エアコンははるかに効率性がよく、最も安価な暖房方法である。

調理する場合でも、電気は効率性が高い。IHクッキングヒーターはエネルギーの84%を鍋に伝えるが、電気コイルでは71%、ガスバーナーではわずか40%である。

電化は、水漏れのあるバケツを穴のないピカピカの新品に交換するようなものである。投入するエネルギーのほとんどが、実際に消費される。

一次エネルギーではなく、有用エネルギー

一次エネルギーのグラフを見ると、長年にわたる化石燃料への依存を断ち切ることはほぼ不可能なように見える。

しかし、問題は一次エネルギーそのものではない。有用エネルギーに注目すれば、今後の課題ははるかに達成可能なものになる。真の問題は、今日の一次エネルギーのすべてを置き換える方法ではなく、必要な有用エネルギー量とクリーン電力で有用エネルギー量を効率的に供給する方法である。クリーンで効率的な電力供給の選択肢があれば、2050年までに世界のGDPを倍増させることが可能になり、一次エネルギーの使用量も36%削減できる。

再生可能エネルギー、蓄電、そして電化によって、エネルギー供給ははるかに効率的になる。つまり、再生可能エネルギーは、化石燃料が持つ潜在エネルギーの全量を置き換える必要はない。実際に使用する分だけを賄えばよく、廃棄物と排出量ははるかに少なくなる。

(2025年12月3日公開)

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