国連世界気候サミットは今年も無事に終了した。ブラジルでは、気候変動対策のための資金調達と適応策について一定の進展が見られた。しかし、化石燃料への依存を終了させようという取り組みは、予測されたように、化石燃料勢力によって妨害された。
そのため、多くの関係者が疑問を抱いた。本当にこれが我々にできる最善策なのか?ブラジルのベレン市で開催されたCOP30には、米国を除くほぼすべての国が参加した。この会議では、各国がその国の能力を超えた地球規模の問題に取り組もうとするときに見られる多国間主義の良い面と悪い面が浮き彫りとなった。
良い面としては、COP30は、世界の指導者たちをアマゾンの熱帯雨林の中心に集結させ、森林破壊という世界的問題に注目させることができた。また、地政学的な混乱、戦争、財政削減、国連職員の人員削減のためかつてない年であったにもかかわらず、気候変動対策に関する政治的な勢いを維持させることができた。
しかし、気候変動交渉は長引き、最終文書では化石燃料を含む気候変動の主要な要因を認めることはなかった。そして、国連の意思決定プロセスはサミットの最終日に崩壊した。多くの国は、ブラジルが不透明かつ非民主的な方法で最終決定文書を押し通そうとしたことに反対した。
パリ協定から10年が経過した今、気候サミットは現実の気候変動対策と結びついていないという意識が高まっている。これが、国連の気候変動交渉は今でも目的にかなうものなのか、それとも改革が必要なのかという論争を投げかけている。
国連会議の多くは、最も多い票を獲得した提案が選ばれる多数決を採用しているが、気候変動交渉では異なっている。決定は常にコンセンサスにより採択されるため、すべての国の同意が必要となる。これは、COP1以来続く歴史的な慣例となっている。COP1では、NFCCCのすべての決定はコンセンサスによってのみ行われるべきだという石油輸出国機構(OPEC)加盟国の主張が通ったためである。
コンセンサス形成に重点を置くことで、地球規模の気候変動対策の進展は遅く、漸進的なものとなったとされている。気候変動サミットの決定には、一部の反対意見によって廃案となり、形骸化され、あるいは延期されたという長い歴史がある。
つまり、気候変動サミットは最低公約数を反映している。決定は、化石燃料輸出の収入が大きい国も含め、すべての国が受け入れられるものでなければならない。
コンセンサスへの依存は、COP30閉会本会議において政治ドラマを巻き起こした。ブラジルが他国の介入を許さず、形骸化したCOP決定を強引に採択したことに対し、一部のアフリカ諸国、ラテンアメリカ諸国、及び欧州連合が異議を唱えた。
国連全体で一般的な慣行である多数決を国連気候変動交渉に導入すれば、この状況を効果的に打開し、気候変動に関する意義ある政治的変化を促すことができると考えられる。
過去10年間、各国政府代表はパリ協定ルールブックの策定に取り組んできた。COP30で、世界的な炭素市場に関する唯一の残された作業と、適応に関する世界の進捗を測定する方法について最終的な決定が下された。
今やルールは完全に確立され、気候変動サミットは実施段階へ移った。COP30では、森林破壊を終わらせるための新たな基金の設立、贅沢な旅行への課税の公約、化石燃料の段階的廃止を加速させようとする各国の取り組みなど、新たな気候変動対策や連合が次々と現れた。
これは、各国政府が、国際的コンセンサスに基づく声明を交渉するよりも、小規模な「有志連合」として気候変動対策に向かっていることを示している。今後の気候変動サミットはその形式を見直して、国際ルールの交渉よりも実施に重点を置くようにする必要があるかもしれない。これにより、協力体制、説明責任、及び進捗状態のチェックが強化される機会を生み出すこととなろう。
改革の機が熟している第3の分野は、既得権益である。COPでは、化石燃料業界のロビイストたちが自由に参加し、長年にわたり夢の実現を阻んできた。ある報告によると、COP30には1600人の化石燃料ロビイストが参加した。歴代のオーストラリア政府は、気候変動サミットでサントス社などの化石燃料企業を宣伝してきた。
COP28ではアラブ首長国連邦が、COP29ではアゼルバイジャンが議長国となったが、両国は立場を利用して石油・ガス取引を進めていたことがメディアにより明らかになった。また、COP30はある広告会社を利用したが、その会社は石油・ガス企業シェルとも取引があった。
9月、国連気候変動枠組条約事務局が気候変動会議参加者に対する新しい自主的情報開示要件を発表したことで、改革に向けた一歩が踏み出された。新たな改革には、義務的な情報開示要件、利益相反の管理に関する明確なルール、透明性基準のある行動規範などが含まれると考えられる。
膨れ上がった交渉議題の合理化から、COP議長国の役割に対し明確な期待を提示することまで、COPの運営方法を改善する多くの提案が提出されてきた。これらの提案は、世界気候サミットには多くの欠陥があることを示し、抜本的な改革の必要性を指摘している。
しかし、COPを完全に廃止すべきだということではない。COPは、現代最大の地球規模の課題に関して政治的意思決定と国際協力を推進するという重要なツールであることに変わりはない。例えば、COP30の開始時に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が発表した新たな数値は、世界の排出量が初めて減少に転じ始めていることを示している。それに対し、パリ協定が実施されない場合には、今後10年間で排出量が20~48%増加し続けると予測されている。
エネルギーシステムと経済の世界的な変革は、深く政治的なプロセスであり、継続的な政治的基盤を必要とする。COPは、最小の島嶼国が最強の経済大国と同等の力を持つことのできる唯一の政治的な場でもあることから、重要である。
やっかいで複雑な問題ではあるが、COP は今後も必要な存在であり続けるだろう。
(2025年12月17日公開)