
米国防総省
米国政府は、「未確認異常現象」(UAP)に関する各種事例について、新たな大量の文書を公開した。これらの現象の多くは、かつてなら未確認飛行物体、つまりUFOと呼ばれていたもので、空や宇宙で目撃された説明のつかない出来事の写真、動画、報告が含まれている。
文書には、「観測された現象の性質について政府が確定的な判断を下せない」「未解決事例」が詳述されている。
軍事戦略、国家安全保障、兵器・技術能力の研究者として、私はUAPのいくつかの例に、その示すものと提起する疑問の点で興味を引かれる。
今回の新たな公開資料をここ数年のほかの報告と合わせて見ると、UAPの背後に何があるのか、そして現在どこまで分かっているのかについて、おぼろげな輪郭が見えてくる。
今回新たに公開された資料に含まれるすべてが不可解というわけではない。例えば、月面から宇宙飛行士が記録した未確認の光を示しているように見える画像の一部は、単なる視覚ノイズや画像上のアーティファクトである可能性が高い。

アポロ12号の月面ミッション中に撮影された写真には、空に未確認の光が写っているように見える。注目すべき領域は拡大されている。
NASA
宇宙飛行士は肉眼で明るい光を見たとも報告している。これらは高エネルギー宇宙線による閃光かもしれない。こうした宇宙線は、地球の保護的な磁場の外ではより多く存在する。
同様に、明るい光が素早く飛び去るように見える動画記録は、カメラのすぐ近くを昆虫が飛んだことで説明できるかもしれない。焦点が合わず、高速で移動しているように見えるからだ。
一方で、すぐに退けるのが難しい事例もある。最近のいくつかの例は、それが何であるかは分からなくても、何かが起きていることを示している。
2020年、米海軍はF/A-18スーパーホーネットが記録した3本の動画を機密解除した。そこには、明らかな推進装置がないにもかかわらず、現在の技術理解では説明できない飛び方をする謎の「Tic Tac」型物体が映っていた。米海軍は、それらが何であるかは分からないと述べた。
戦闘機の高度なセンサーがこれらの現象を検知し追跡したことから、装置の不具合や誤ったノイズではなく、何らかの実在する物体だったことが示唆される。

2024年に米軍機が検知した、推定時速800kmで移動する「ダイヤモンド形」の物体の画像。
米国防総省
最も興味深い記録の1つは、2025年の米議会公聴会で共有されたものだ。これは、UAPを追跡していたMQ-9リーパー無人機によって記録されたように見えた。
このドローンはその物体に向けてヘルファイアミサイルを発射し、命中したように見えた。物体はいったん進路からそれたように見え、実在する物理的なものだったことを示唆したが、損傷を受けた様子はなく、そのまま飛行を続けた。
過去10年間には、米国や欧州の軍事基地周辺で、未確認のUAP群が現れたとの報告も複数ある。
いくつかの事例では、 米海軍駆逐艦が謎の「ドローン群」に遭遇したとされる。これらは従来型のドローンだった可能性もあるが、付近に明らかな発進元となる船舶はなく、比較的小型で、おそらく航続距離が短いこれらのドローンがその場所にいることを可能にする手段は見当たらなかった。
2023年には、米国がF-22戦闘機を使い、中国の高高度偵察気球を米本土上空で撃墜したことも分かっている。同年にはハワイ上空でも似たような事案が起きたが、米国はこの事案については中国由来とは見なしていなかったと報じられている。
同じく2023年、米国は北米上空でほかにもいくつかの物体に対処したが、米国政府とカナダ政府はいずれも、それらが何だったのかを明らかにしていない。
これらの出来事には、簡単な説明がつかない。
人間以外の知性が関与しているという考えに飛びつく人もいる。しかし、その証拠はない。宇宙人や異次元の存在について考えるのは面白いかもしれないが、それはUAP問題への満足のいく答えとは言い難い。
おそらく、現時点で「最善」と言える説明は、ドローン、またはその他の既知の技術だろう。それでも一部の現象は現在の技術能力を超えているように見えるため、この説明はなお部分的なものにとどまる。また、誰がその現象の背後にいるのかという疑問も残る。
新技術が関係している可能性もある。米軍内部や同盟国の防衛メーカーなど「友好的」な勢力が、事情を知らない軍の運用者を相手に反応を見るため、製品を試験しているのかもしれない。同様に、中国などの敵対勢力が試験を行っている可能性もある。
それでも、物理学について分かっていることに照らすと説明が難しい事例もある。「Tic Tac」動画の物体は、どのような航空機にも通常みられる挙動を示しているようには見えず、推進の兆候もない。
あるいは、一部のUAPはセンサーシステムの不具合という単純なものかもしれない。しかし、この説明もまた部分的である。軍用機や軍艦が、異なる周波数で作動する複数の能動・受動センサーで、これらの物体を検知した事例が複数あるからだ。
米国による最新の公開資料は、UAPとは何かという問いにほとんど答えていない。この答えのなさこそが、おそらく最も興味深い点である。
事例が多岐にわたることを考えると、すべてに当てはまる単一の説明はおそらくない。一部はドローンである可能性が高く、別の一部は画像上のアーティファクトである可能性が高い。しかし、本当に特定が難しい現象群も実在する。
利用できる説明の中で、人間以外の知性という説はおそらく最も面白いが、同時に、可能性が最も低い説明でもある。これらの事案の原因はいずれ、はるかに身近なところで見つかる可能性の方がずっと高い。
はっきりしているのは、各国政府が強い懸念を抱き、注意深く見守っていることだ。
(2026年6月23日公開)