オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は7月9日、同大学からスピンオフした企業Q-CTRLが、オーストラリア政府から、宇宙機に搭載するリモートセンシング観測機器(ペイロード)の生産を拡大するための資金として450万豪ドル(約3億6000万円)を授与されたと発表した。
今回の助成金は、「近代製造戦略(Modern Manufacturing Initiative : MMI)」を通じて国内の宇宙関連製造業を支援するモリソン政権の取り組みの一環である。
Q-CTRL社は同大学の物理学者マイケル・ビアクック(Michael Biercuk)教授が2017年に設立し、量子ハードウェアの安定性を高めるためのソリューションを提供している。同社が量子コンピュータの量子誤り(quantum error)の特徴付けと制御を行う技術を基に開発した量子スケールのセンシング技術は、実環境でのパフォーマンスを最大500倍改善できるという。
同社はこの技術を用いて宇宙機用のリモートセンシング観測機器を生産することで、成長著しいオーストラリアの宇宙産業において重要な役割を果たすことを期待している。
ビアクック教授は「宇宙での運用に対応する磁場計測用量子増強(quantum-enhanced)センサーの構築を始めることをうれしく思う」と語る。このセンサーを用いた地球観測により、鉱業の生産性向上や、防衛活動用の地理空間情報の収集が可能になるという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部