2021年11月
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細胞分化に影響する「ノイズ」の役割を解明 豪メルボルン大学

オーストラリアのメルボルン大学(University of Melbourne)の研究者が、数理モデルを用いて、細胞分化に決定的な影響を及ぼす「ノイズ」の役割を解明した。10月11日に発表した。この研究の成果は学術誌 Cell Systems に掲載された。

この研究により、分子的・環境的な「ノイズ」が細胞分化に深く関与し、1つの生物内に存在する異なる細胞型の数まで変えてしまうことが明らかになった。ノイズは、「エピジェネティック地形(epigenetic landscape)」でいうところの谷を埋めたり、谷や尾根を移動させたりするという。

スコットランドの生物学者コンラッド・ハル・ワディントン(Conrad Hal Waddington)氏が1960年に提唱したエピジェネティック地形は、細胞の分化を、山や谷で構成される地形を玉が転がり落ちる過程として説明している。 細胞内では、DNA、RNA、タンパク質等の分子が、しばしば予測不可能な形で衝突や相互作用を行うことで、多くのノイズが生まれている。

生物科学科・数学科のマイケル・シュトゥンプ(Michael Stumpf)教授は、「エピジェネティック地形に及ぼすノイズの影響や、この生物学的プロセスを理解する上で生じていた複雑性や制約に関する新たな示唆を提供した 」と本研究の意義を語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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