オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)とスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)、バーゼル大学(University of Basel)の国際共同研究チームが、世界初の技術を用いて、これまで解明されていなかった細胞の成長に関する挙動を明らかにした。6月22日付け発表。研究成果は学術誌 Nature Communications に掲載されている。
シドニー大学のデービッド・マルティネス-マルティン博士
一般に、分裂前の細胞は、線形的または指数関数的に大きくなると考えられている。今回、シドニー大学の物理学者デービッド・マルティネス-マルティン(David Martinez-Martin)博士らは、細胞の質量をリアルタイムで測定できる「慣性ピコ天秤(inertial picobalance)」という独自の技術を用いて出芽酵母(saccharomyces cerevisiae)の成長を観察した。この結果、酵母が、1細胞レベルでは、いくつかの間隔(区分)に分かれた線形成長を示し、各間隔で「ギアのように」成長速度を、加速または減速する傾向を持つことが明らかになった。
細胞の質量の変化を観察する
研究する場面
技術の一部
(提供:いずれもシドニー大学)
今回の研究でみられた酵母の挙動は、人間を含む動物の細胞の挙動とは大きく異なる。同博士らは2017年に、ピコ天秤を用いて、生きている哺乳類の細胞の大きさがヨーヨーのように変動することを観察している。同博士は「我々が真菌界と動物界で確認したこれらの挙動は、細胞が質量と大きさを調節するためにさまざまな異なる戦略を用いるということを強く裏付けている」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部