オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は7月18日、農地にまばらに生えているユーカリ属の木が、コアラにとって重要な栄養と保護を提供しているという研究結果を紹介した。この研究の成果は学術誌 Behavioral Ecology に掲載されている。
オーストラリアを代表する動物であるコアラは、今年2月に絶滅危惧種に指定された。農地に生えるユーカリは、肥沃な土壌のおかげで窒素を豊富に含み、毒性が少ないため、ユーカリの葉を主食とするコアラにとって魅力的な栄養源となる。
コアラの栄養源となっているユーカリ
(Credit: Greenfleet Australia via Flickr. 提供:シドニー大学)
同大学の研究チームは、ニューサウスウェールズ州北西部の農業地帯で、23頭のコアラをGPSを用いて追跡し、特定の木を訪れる回数や樹上で過ごした時間、移動時間を調べた。その結果、コアラは体力の消耗や捕食される危険にもかかわらず、遠く離れた窒素が豊富な木へと頻繁に移動することが明らかになった。また、窒素が豊富な木や隠れ場となる大きな木でより多くの時間を過ごすことが分かった。
研究で使用されたコアラ
(Credit: Mathew Crowther/USYD. 提供:シドニー大学)
筆頭著者のマシュー・クラウザー(Mathew Crowther)准教授は、「開墾による生息地の分断化がコアラの個体数減少の最大の要因」であると指摘し、さらなる生息地分断化を防ぐため、農家はこれらの木を何としても守るべきであると呼び掛けている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部