2022年08月
トップ  > 大洋州科学技術ニュース> 2022年08月

原発性進行性失語(PPA)の早期診断へオンラインツールを開発 豪シドニー大学

オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)の脳・精神センター(Brain and Mind Centre)の研究者と臨床医が、原発性進行性失語(primary progressive aphasia:PPA)の早期発見率を改善する、医師用のオンライン無料診断ツールを開発した。7月25日付け発表。このツールの詳細を解説した論文は学術誌 Brain Communications に掲載された。

PPAは比較的若年で発症するまれな認知症であり、主に発話や言語に影響する。PPAには3つの亜型があり、脳の萎縮や病理、予後のパターンがそれぞれ異なる。すべての亜型に共通しているのが早期診断が難しいという点であり、通院の負担や治療の遅れにつながっている。

同大学のデービッド・フォックス(David Foxe)博士は、認知障害のスクリーニングに広く用いられているAddenbrooke's Cognitive Examination-III(ACE-III)という検査を基に、自身が所属する認知症研究グループ「FRONTIER」の患者データを用いてこのツールを作成した。このツールはPPAの診断を70~80%の感度(sensitivity rate)で予測する。すなわち、PPAの疑いのある患者に対し、どの亜型に分類されるかを70~80%の確率で診断できる。

PPA と診断されるのに2年近くかかった患者(右)とその妻
(Credit: Jane Dean)

PPAの影響を受けた脳の内部
(提供:いずれもシドニー大学)

フォックス博士は、「PPAの亜型の診断は複雑で、特に経験の浅い医師にとっては難しいが、PPA患者が適切な治療を受けるためには、正確な診断が非常に重要になる。このツールは、特に認知症外来が少ない地方部や一次医療施設でのPPAの臨床評価を向上できると期待している」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る