オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)の学際研究チームが、気候変動や極端な気象現象が同国の食品サプライチェーンに及ぼす広範な影響をモデル化し、連鎖的に生じうる雇用や収入、食事の質への影響を明らかにした。この研究の成果は8月19日付けで学術誌 Nature Food に発表された。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書の主執筆者の一人であるアルニマ・マリク(Arunima Malik)博士が率いる研究チームは、栄養や地域のサプライチェーン、雇用・収入等に関するモデルを含めた統合的なフレームワークを用いて、さまざまな部門や地域にわたる気候変動の影響を分析した。影響は地域社会全体に及ぶが、悪影響を最も大きく受けるのは田舎地域であることが分かった。
(提供:シドニー大学)
また、サイクロン、洪水、山火事、熱波等の気象現象は、複雑につながりあった現代のサプライチェーンにより、周辺地域だけでなく遠く離れた地域にまで影響を及ぼす可能性があることが明らかになった。局所的な気候変動による影響は地域の食品価格の上昇や食事の質の低下を招き、同地域内でも貧しい家庭ほど食生活が悪化する可能性が高い。さらにチームは、食料供給への影響が、輸送やサービス等の食品以外の部門における雇用や収入の減少にもつながることを示した。
マリク博士は「地域社会や政府機関が緩和計画の策定や気候変動へのレジリエンス構築を推進するには、こうした影響を認識することが非常に重要になる」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部